第3章 歪に終止符を
校舎裏の奥にある、螺旋階段の影に連れて行かれる。
「ちょっとっ……」
「黙ってこっちにケツ向けろ」
「はぁ? あんた何言ってっ……」
修二の冷めた目はいつもの事なのに、今日の雰囲気は見た事のない、今まで向けられた事がなかった、物凄く冷たいものだった。
初めて、怖いと思った。
「早くしろ」
「修二……どうしちゃったのよ……」
なかなか私が言う通りにしないから、修二は私を無理やり振り向かせた。
抵抗なんて意味はなくて、物凄い力で押さえつけられる。
そこからはもう何も出来なくて、私は初めてこの男との行為に涙を流した。
痛みと苦しさ、そして歯痒さだけしかない虚しいもの。
こんな最低最悪な行為は、もう二度と体験したくない。
乱れた服を押さえながら、私は座り込んでいた。
「他の男にうつつ抜かしてねぇで、お前は俺だけに脚開いてりゃいい」
酷い侮辱のような言葉に、私は怒りが止められなくて、涙の止まらない目で修二を睨みつけ、思い切り手を振りかぶって修二の頬を叩いた。
フッと鼻で笑った修二が、私の後頭部に手を回してキスをした。
何でこんな時に、こんなキスをするんだろう。
こんな、優しくて、甘いキスを。
涙が止まらなくて、私は修二を突き飛ばして走る。
乱れた服を直す事すらせずに。
その日は、どうやって帰ったのか分からなくて、気づいたら自分の部屋の隅でうずくまっていた。
もう、終わりにしよう。
私には、これ以上耐えられる自信がない。
多分私は、修二が好きだ。
だから、もうやめよう。離れて、さよならするんだ。
そう決意して、私は自分の体を抱きしめたまま、眠りについた。
数日後、久々に学校に現れた修二に、またも半ば無理矢理に学校から連れ出され、私は街を歩く。
丁度よかった。まるで別れ話でもするみたいに、妙な緊張感に襲われながら、私は口を開いた。
「私、もうやめたいの。修二と一緒にいる事」
「……は?」
立ち止まり、こちらを振り返る修二は、驚きと戸惑いの混じった顔をしていた。
―――ドスッ。
鈍い音が聞こえ、私は修二の後ろにいつの間にか立っていた人物を見る。
目が、合った。
「……陽……介?」