第3章 歪に終止符を
お気に入りと言われているけど、私は所詮何人かいる女の中の一人で、特別なんて思うのがそもそもの間違いなんだ。
勘違いしちゃ、いけない。
「……お邪魔だったみたいね……」
「別に。何かあったか? 探してたって?」
暴れる鼓動を落ち着かせるように、小さく深呼吸をして修二を見る。
「ちょっと聞きたい事があるの。話せるようになったら、連絡して」
「おい……」
修二に呼び止められたけど、さすがにこんな状況の場所にはいたくなかった。
勝ち誇ったみたいな顔をする女から目を逸らし、私は教室を出た。
私は一体、どうしたのか。
あの男は、好きになっちゃいけない人間で、絶対苦しくなるに違いない。
目を覚ませ、私。
すぐにスマホが震えて、修二から連絡が来た。
いくら何でも早過ぎる。
校舎裏で待っていると、いつもみたいにダルそうな男が、両手をポケットに入れて歩いて来る。
「お前さぁ、人が呼んでんだから、無視してくんじゃねぇよ」
「あんなとこに私がいる方がおかしいでしょ。遠慮してやったのに、責められる覚えないんだけど」
どうでもいい話をする時間も勿体ないから、私は本題に入る事にする。
「陽介の事なんだけど。陽介と一体何があったの?」
私の問い掛けに、修二は興味なさそうな顔で目だけを斜め上に向けて「忘れた」と言った。
「ふざけてんの? 病院送りにしたのに、覚えてないわけないでしょ?」
「別にふざけてねぇけど。それより、お前そんなにアイツの事気になんの? 惚れたか?」
「話逸らさないで。ちゃんと答えてよ」
食い下がる私に、修二が少し距離を縮めてくる。
長身な彼と目を合わせるには、かなり苦労する。
「ただ、ムカついただけだ。それ以上でも以下でもねぇよ」
呆れた。そんなつまらない理由で、人を一人病院送りにするのか。
狂ってる。
「何よ……それ……。あんた、どういう神経してんの? そんな事で陽介を……」
「陽介陽介うるせぇよ……ダリィ……」
いつも冷めた目をしているけど、更に冷えた視線が私を突き刺すみたいで、ビクリと震える。
怒っているんだろうか。
一気に距離を詰めて、手首を掴まれた。力が、凄く強くて、痛みに顔を歪めるけど、修二は気にする事なく歩き出す。