第3章 歪に終止符を
目を覚ました私は、昨夜と同じフカフカのベッドにいた。
カーテンから微かに漏れる光で、今外が夜じゃない事が分かる。
「ん……今何時……」
少し離れた場所から、小さくシャワーの音がした。
体を起こして、まだ寝ぼけている頭をハッキリさせる為に、バスルームへ向かう。
鏡の前に立った私の目に、ふとゴミ箱が映る。
ゴミ袋に入った衣服が見えて、それには血が付いていた。
今までにも、半間は服に血を付けて来る事は珍しくなかったから、そこまで驚く事はないけど、気持ちのいいものじゃない。
「ほんと、喧嘩ばっかりして何が楽しいのよ……」
シャワーの音が止まり、中が静かになる。
お湯にでも浸かっているのだろうか。
服を着ていなかった私は、そのまま扉を開いた。
「ん? おー、お目覚めかぁ? いい格好してんなー」
シャワーを出して、頭から被る。
軽く洗い流して、頭を少しスッキリさせてシャワーを止めて、髪を纏めたら、半間の入っている浴槽に足から入る。
開かれた脚の間に腰を下ろし、半間の胸に体を預けた。
「ねぇ、喧嘩って、楽しい?」
「何だ、その質問」
「一虎もだけど、半間、喧嘩ばっかしてるじゃん」
「さぁなぁー。それより、ずっと気になってたんだけどさぁー、お前何で俺だけ苗字なわけ?」
半間こそ何の質問なんだ。
でも、確かに言われて見れば、周りにいる男子で名前を呼ばないのは、半間だけだ。
ただ、半間は出会った時から半間だから、特に細かい事を気にした事がなかった。
「何? 呼んで欲しいの?」
意地悪する気持ちで顔だけ向くと、少し拗ねたような顔が見えた。
初めての、年相応の顔だ。
「ちょっと呼んでみ?」
「……修二」
「……ん……これからそれで呼べ」
何でそんな嬉しそうな顔するの。
調子が狂うじゃないか。
湯船から出た半間、じゃなくて修二に抱き上げられ、濡れたまま脱衣場に強制的に出された。
「またするの? あんたほんと性欲狂ってるよね」
私の言葉に、片方の口角だけ上げて笑ってキスをする。
それは、行為の始まりを告げるキスだ。
「半っ……」
「名前……」
「あっ、しゅぅ……じ……んぁっ……」
「あー、やべぇな……クセになるわ……」