第2章 戸惑い、揺れる
自販機の隣のフェンスに凭れ掛かって、他愛もない話をする。
暫くして、馴染みのあるタバコの香りが鼻をくすぐった。
「何してんだ、お前」
「半間……」
一虎の電話の相手、半間がタバコを片手にそこに立っていた。
少し機嫌が悪そうに見えたのは、私の気のせいではないだろう。
「一虎、何で半間?」
「そりゃ、こっちの台詞だ。何でこんな時間にここにいるんだ?」
タバコ片手に見下ろされるけど、何故半間の機嫌が悪いのかが分からない。そもそも、何故私が怒られるのか。
「あんたに関係ある?」
「あぁ?」
何も悪い事したわけでもないし、ましてや私の彼氏でもないのに、とやかく言われる筋合いなんてない。
「デートしてたのよ。何か文句ある?」
「えっ!? デートって、誰とっ!?」
一虎の食い付きが凄い。
「……アイツか……」
「だったら何? 別に半間には関係ないでしょ。ちょっとっ……い、痛っ……何すっ……んんっ!」
腕を掴まれて引っ張られた瞬間、私の悪態は半間の唇に吸い取られた。
「ゃ、っ、やめっ、ぅンっ、ふっ……はぁっ、んっ……」
乱暴で、狂気的で、なのに体の奥が疼く淫らなキス。
腰を撫でられ、ゾクリと粟立つ。
「ひあぁっ!」
唇が離れた途端に、体が宙に浮く。
「稀咲に、また後で連絡するって言っといてー」
「はいはい。優しくしてやれよー」
「俺はいつでも優しーって」
肩に担がれて、意味が分からないまま何処かへ連れて行かれる。
夜の歌舞伎町へ入ったのは初めてで、見世物になっているにも関わらず、キラキラした沢山の大人な店に圧倒される。
少し人気の少ない道に差し掛かると、チラホラとカップル達が見て取れた。
「ちょっと、半間っ! 何処行くのっ!? 降ろしてよっ……」
「暴れんなよ、落ちるだろ……ダリィ……」
落とすようなヘマはしないだろうけど、万が一にも落ちたくないから、とりあえずは大人しくする事を選ぶ。
「ちゃんは偉いねぇー」
「茶化すな、バカっ……」
「ひでぇなぁ」
楽しそうな半間に連れ去られた私は、ホテルに連れて来られた。
少し乱暴にベッドへ放り投げられ、衝撃に目を閉じた。
次に目を開けた時には、半間が私を組み敷いて、笑っていた。