第6章 日常の変化(※)
夢主side
2人でクラブを出て夜の街を歩く、風が冷たい。
酔いが回った身体もこれで少しは落ち着くだろうか。
春千夜の方をみると会った時と何も変わらない顔、同じお酒を飲んでたはずなのに。
「酒入ってるからタクシーでわりィけど、家送るから」
『あ、ありがと・・・』
・・・なんだ、あっさり帰っちゃうんだ。
少しくらい名残惜しいとか、まだ一緒にいたいとか思わないの。帰したくないとか言ってくんないの。
それとも別の女のとこいくの?
酒飲む相手なら私でもいいけどソッチの相手は他がいいんだ。
・・・私、こんなめんどくさい女だっけ。
こんな気持ちになるのも初めてだから、こんな自分の黒い感情も初めて知った。
春千夜の方が年上だから余計に置いてかれている感じがして、なんだか遠く感じて。
・・・普通に送るって言われた事が悲しくて。
春千夜からすればたまたま仕事が一緒だった女、たまたま今日再会しただけの女なのかもしれない。
あぁ、こんな気持ち、知りたくなかったな。
適当にタクシーを拾い、2人で乗り込む。
春千夜の顔がなぜか見れなくてずっと窓の外を眺め続けた。
連絡先も知らないからまた会えるかも分からないし、でももうそれが正解な気もする。
自分をちゃんと見てくれない男なんて嫌い、嫌い。
どうしようもなく嫌いだ。
こんなに見る目ない男なんて。
『・・・・・・春千夜』
「ん」
意地悪じゃなくて少し優しい声。
もう、なんで分かってくんないの、この私が求めてるのに。
なんで。
「なァ、」
キュッと唇を結んでいると、彼が私の左手をゆっくり絡め取った。
「・・・・・言いたい事はさ、素直に言わなきゃわかんねェんだぜ?」
そのまま手の甲に彼の唇が触れた。
ペロッと舐められて思わずビクッと反応してしまう。
悔しい、悔しいけど、もう、泣きそうだ。
『・・・・・・まだ、一緒にいたいの、だから・・・・・・帰んないで』
「・・・イイコにおねだりできんじゃん。
今日はオレんち、来いよ?」