第6章 日常の変化(※)
夢主side
この香り、この声。
一晩で覚えてしまった彼の匂い、意地悪な声だ。
『・・・・・・・・・春、千夜・・・』
「あ"ぁ?こんなとこで何してんの、オマエ」
おそるおそる振り向くとそこに居たのは春千夜だった。
ジャケットは着ていないが今日もスーツ姿。
・・・・・・仕事?
『わ、わたしはここで仕事だったの。アンタこそなんでいるの』
「オレはただのプライベート、仕事終わりに灰谷の奴らが行くっていうからそのまま来たってワケ」
・・・むしろ、仕事であってほしかった。つまりこの男はプライベートで男女の関係を求めに来たってことじゃん!
たまたまここに私がいただけだし。
『・・・じゃあさっさと戻りなよ。ここなら女の子いっぱいいんじゃん』
「そりゃあねえ、でも酒飲んでたら目線の先にすげぇイイ女がいたもんだからよ?
・・・・・・なァ、チャン?」
廊下が暗くてよかった。・・・きっと今の私は顔が赤い。
グッと近づく彼の顔、久しぶりに見る姿にどうしても胸が高鳴ってしまう。なんでなんだろう。
顎をなぞられながら彼の指が首筋へと降りていく。
「・・・こんな場所にオマエがいんなら、そりゃ捕まえねーとなァ?」
『・・・ッ。み、みてたの』
「目立つんだよオマエ、すぐ分かるわ。なのにどっかいくなんて冷てェなぁ」
ぐっ、と言葉に詰まる。
正直もう今は頭の中が浮ついて仕方ない。すぐに私の姿を見つけてくれた、傍にいたハズの女よりも私の所に来てくれた。
・・・彼に言われるイイ女という言葉にだけはなぜか身体も喜んでしまう。
からかうような言葉でさえどうでもよかった。どうしよう、嬉しい。
言われ慣れてる言葉でさえこんなに心を動かしてくる。本当に、なんなんだこの男は。
唇を固く結んで彼の顔を見上げた。
あぁ、この意地悪な顔。私をからかって遊んで楽しんでいるんだ。
彼の指が私の鎖骨を行ったり来たりする度に、少しばかり反応してしまう。
全身からこんなにも色気が漏れている男に、今の私には為す術が無かった。