第6章 日常の変化(※)
夢主side
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色鮮やかなライトがあちこちを照らして、大きな音楽にフロアには溢れる男女達。
隅にはいやらしく絡み合う者もいたり、出会いを求めて彷徨う男もいる。
クラブのような場所にいると自分の汚れさえ気にならなくなる。私だってただの女。
今回はVIPの客の元なので、フロアとは違い広めの部屋に集まっている。
依頼主が取引をしている最中、ターゲットの機嫌を取るだけの簡単なお仕事。
『お酒、強いんですね。貴方のような大人な男性とても好きなんです。私なんてこんなだから・・・』
「いやいやぁ!何を言ってらっしゃる、フロアを見渡したって貴方ほどの美人いませんよ!とてもお綺麗だ・・・」
『本当ですか?・・・ふふっ、なんだか照れちゃいます。今日一緒にいて下さるのが貴方でよかった・・・』
指先でスっと彼の手の甲をなぞる。
こういう時は身体のどこかが必ず相手にも触れている状況が鉄則だ。
ターゲットはますます上機嫌。
今宵も私は極上の女を演出する。
『・・・・・・あ、ごめんなさい。少し呼び出しがあったので待っててくれますか?』
ゼンから電話だ。
私は立ち上がってVIPの部屋を後にした。フロアに続く廊下に向かい、彼の電話を取る。
『・・・もしもし、今ターゲットと接触中だけど』
《おーう、わりぃ。でももうそろ終わんだろ?依頼主も取引の方は順調に進んでるみたいだから抜けてもいいぞ》
『はぁい。ゼン、こっちいないの?酒でも付き合ってよ』
《オレはいま別件もあんだよ。その辺の奴でも引っ掛けとけ》
そういって切られる通話。ちっ、付き合いの悪い奴。
その辺もなにも、見た感じこのクラブにイイ男はいなかった。
くだらない相手と飲む酒はとても不味い。
『しょうがないなぁ・・・今日は切り上げるかぁ』
接待にも飽きてしまったので少しだけフロアの方に足を進める。こういう場所に1人でいるとナンパが耐えないのが多少厄介ではあるが。
せっかくだし酒でも誰かに奢って貰ってから帰ることにした。