第2章 chapter1 ~敵~
目の霞みもようやく収まったところで、どこからか人の声が聞こえてきた。
「…君のポケモン、話をしていたね。」
後ろから聞こえてきた声に立ち上がって振り向くと、帽子を被った緑の髪の青年がこっちに向かってきていた。
「貴方も、ポケモンと話ができるんですね?」
話をしていた事が分かるということは、私と同じ力を持っている人なんだろう。
「あぁ、僕はN。君は?」
「私はサクラ。こっちが相棒のレオです。」
軽く自己紹介をする。
その中で、私はNさんのハイライトのないどこか淋しげな瞳から目が離せなかった。
「よく育てられているね、君のパートナーは。」
Nさんの一言に、レオは嬉しそうな顔をした。
「バトルで頑張ってくれてるもんね!」
ニコッと微笑む私とは裏腹に、その時Nさんが眉をピクリと動かした。
「君も…バトルでトモダチを傷付けるんだね…。」
さっきの優しそうな表情と打って変わって、軽蔑する様な表情になった。
「Nさん…どうしたんです?」
「結局、トレーナーなんてポケモンを傷付けるだけじゃないか…!」
トレーナーに対して静かに、それでいて激しい怒りがNさんから発された。
なぜそんなにバトルを嫌うのか、私には意味が分からなかった。
「明日の昼、カラクサタウンに行くといい。考え方が変わるかもしれないからね。」
そう言ってNさんはどこかに行ってしまった。
[サクラ、俺達はいつでもサクラの味方だからな…?]
私の焦りを感じたらしいレオの言葉に、心がほんの少し軽くなった気がした。
カラクサタウン…。そこに何があるのかは分からないが、行くしかない。
覚悟を決めた私は、レオをボールに戻して一番近いポケモンセンターへと向かった。