第2章 chapter1 ~敵~
やっと落ち着いた所で周りを見回すと、もう既に演説は終わっていたらしい。
そういえばさっきの緑の髪の人はたしかゲーチスと名乗っていた…。
それに…プラズマ団…?
「サクラ。」
さっきの話に違和感を憶えていると、急に声をかけられた。
ハッとして顔を上げると、そこにはNさんが立っていた。
「演説、聞いてくれた?」
「ええ…。Nさんもプラズマ団の方だったんですね。 」
Nさんがゲーチス達の仲間だったんだと思うと、少し心が痛む。
「ラティアスか…。珍しいポケモンを連れているんだね。」
その言葉に少し怒りを感じてしまった。
「私にとってはどんなポケモンも同じ家族です。」
「へぇ…。じゃあ、君のポケモンの声をもっと聞かせてもらおう!」
少し驚いたような素振りを見せたあと、Nさんはベルトからボールを取り出してポケモンを繰り出した。
確かチョロネコというポケモンだ。
私はティアナの方を見ると、ティアナは頷いて一歩前に進み出た。
チョロネコの攻撃を、ティアナは右へ左へ優雅に交わしていく。
どうやらかなりのレベル差があるらしい。
「ティアナ、一気に決めるよ…。龍の波動!」
私の指示を聞いたティアナは二コリと微笑み、口から青白い閃光を放った。
その閃光は一直線にチョロネコへと向かい、直撃した。
上がった砂煙が晴れると、チョロネコは目を回して倒れていた。
「お疲れ、チョロネコ。」
Nさんはチョロネコのボールを握り締め何かを考えていたが、どこか腑に落ちない様子で口を開いた。
「わからない…。気性が荒い訳でもないそのラティアスがなぜそこまでバトルを楽しんでいるんだ…?」
Nさんの質問に、私の代わりにティアナが答えた。
[サクラ様が私達が思うのと同じく、大事にしてくださるからですわ。だから、サクラ様のお力になりたいのです。]
そう話すティアナの横顔は、どこか固い決意を抱いているようだった。