第8章 気になるあの子は
質問があると言ったベックマンに花子はだいたい予想が付いていた。多分シャンクスの事だろうと。
「何度も言いますけどシャンクスさんの事は格好いいと思いますよ。」
「…それだけか?」
「えぇ~…じゃあ、肌蹴た胸元がセクシー?」
どれもこれも的を得ない解答にベックマンが険しくなる。そんな彼の表情に花子はくすくすと可笑しそうに笑った。
「ごめんなさい、巫山戯過ぎました。」
「…大人をからかうな。」
「だって皆しつこいんですもん。」
そう言って膝を抱え海を見つめる花子はゆっくりと口を開く。
「…心配しなくても私はシャンクスさんの事は好きになりませんよ。」
「…へぇ。」
「人としては好きですよ?でも気があるとか、そんな事はありません。」
今まで気の無い素振りをしてシャンクスに近付こうとした女をベックマンはごまんと見てきた。しかし、人誑しの彼にその演技は崩れ泣き縋る者も。
「それに私、海賊は好きにならないって決めてるんです。」
「そりゃ何でだ?」
「だって海賊は自由に生きるものでしょう?好きな人に会えないなんて…私寂しくて浮気しちゃう!」
悪戯っぽく笑う花子にベックマンは何と無くシャンクスが彼女を気に入るのが分かる気がした。
「船に乗せてくれと言ったらいいじゃねぇか。」
「それこそ無理です!」
「?」
「もし他の人を好きになったらそれこそ私は耐えられない…。」
寂しそうな花子の声にベックマンは何も言わず耳を傾ける。
「それに…私は弱いからきっと迷惑掛けちゃう。」
「…守ると言っても?」
「絶対なんて無いんです。きっといつか私の存在が重荷になる…。」
それが嫌なんですと悲しげに笑う顔を見てベックマンは目を見開いた。その瞳に何を映しているのか…その想いは誰に向けられているのか…。
「お前は…っ?!」
「えぇ?!コハク?!」
ベックマンが花子に手を伸ばそうとした時、突然コハクが彼に向かって口から水を吐き出し睨み付けた。まるで花子を虐めるなとでも言うかの様に。
(ごめんなさい!大丈夫ですか?)
(いや…少しイジメ過ぎたな。)
(えぇ?!コハク、虐められたの?!)
(…。)そっちじゃ無いんだが…