第8章 気になるあの子は
花子 side
「ん…。」
チュンチュンと聞こえる鳥の声にふと意識が戻る。重い瞼を開ければカーテンの隙間から日が射し朝なんだと気付く。
(身体が怠い…。)
痛む頭と気怠さに飲み過ぎたと反省し寝返りを打つと何故か感じる固い感触。
「は?」
目の前には逞しい胸板。上を向けば豪快にイビキをかきながら眠っているシャンクスさんの顔。
(…もしかして。)
一抹の不安を感じ布団の中を覗けば見事的中。私も、そして彼も何も纏っていない状態。
(…やっちゃった。)
部屋を見渡せば馴染みのある自分の部屋。帰って来た記憶は無いが、床に乱雑に投げ捨てられた衣服が妙に生々しい。
「いっ…たたたぁ…。」
何が起こったか理解すると二日酔いとは違う身体の痛みに耐えベットから抜け出すと適当に服を羽織りリビングに向かった。
「えぇ~と…あった、あった。」
薬箱から避妊薬を取り出し水と一緒に流し込んだ。ロー君と別れてから飲む事の無かったそれは苦く何だか切なくなった。
(ロー君…元気かな?)
ちゃんとご飯食べてるかな?夜更かししてないかな?
(あの子と…仲良くしてるかな?)
忘れようとしていたロー君との事が甦り鼻がつんと痛む。すると扉の開く音が聞こえ慌てて涙を拭い振り返ると、何とも気まずそうなシャンクスさんの顔。
「おはよう、よく寝れた?」
「…あぁ。」
大きな身体をのそのそと動かし入ってくる彼を椅子に座らせ水で溶いた薬を渡した。
「これは?」
「二日酔いの薬。昨日、結構飲んだから。」
訝しげに見つめるシャンクスさんに私は銀のコップを取り出すと、薬をそれに移し彼に差し出した。
「もし、頭痛いんだったら飲んで?いらなかったら飲まなくてもいいし。」
「…いや、ありがとう。」
一瞬驚いた顔をしたシャンクスさんは苦笑いを浮かべ薬を受け取ると一気に流し込んだ。
(銀は毒味とかの時に使うからね。)
四皇なんて言われているから命を狙われる事も多いだろう。そう思うと偉くなるのも大変だなって思った。
(~っ?!にっげぇっ?!)
(苦いよねぇ~。私いつも蜂蜜と一緒に飲むもん。)
(…悪かった。)
(ふふっ、何の事?)