第2章 目が覚めると
まず何故イッカクがこんなに号泣しているのかと言うと、あの時彼女を庇った花子が撃たれ血を流し気を失ってしまった。怪我人を放っておく訳にもいかず、ハートの海賊団の船"ポーラータング号"に連れていき治療をした。弾は貫通していたものの、花子は2日程熱に魘されていたと言う。
「それは、それは…ご迷惑をお掛けしました。」
「本当に馬鹿だよ!何で私なんか助けたりしたの!?」
「イッカクが危ないと思うと身体が勝手に…。」
力無く笑う花子にまた感情が沸き上がってきたのか、彼女に飛び付こうとするイッカクをベポに止めさせ男は2人揃って部屋から追い出した。
「はぁ…あいつは…。」
若干疲れた表情を浮かべる男にきっと自分が寝ている時も何かと煩かったのだろうと、心の中で花子は男に謝った。
「兎に角…うちのクルーを庇ってくれた事は礼を言う。」
「いえいえ、私が勝手にやった事なので…。」
意外にもちゃんとお礼は言える人なんだと思っていると、花子は何か思い出した様に口を開く。
「そうだ、此処って国で言うとどの辺りですか?一応、両親に連絡したいので。」
「あぁ?」
「後、電話を…でも国際電話って高いんですよね…。あっ!私の鞄ってあの船にありました?」
「ちょっと待て。」
次々と話し出す花子に男は待ったを掛ける。しかし、当の本人は通信料がぁ~とか、まず時差はどれくらいなのだと唸っている。
「…お前、生まれは何処だ?」
「日本です。あ、ジャパンって言った方が分かりますか?」
「…因みに此処は何処だと思っている?」
「アメリカ?でも、海賊と言ったらカリブよね?じゃあ、南米とか?」
こんな事なら地理をもっと勉強しておくんだったと1人頭を抱える花子に、男も重い溜め息を漏らし頭を抱えていた。
「悪いが…お前の言っている国の名は聞いたことがねぇ。」
「えっ?」
じゃあ、此処は何処なのだと言いたげな花子の表情に男は近くにある椅子に腰掛け、開いた足に肘を付く。
「此処は…海賊達が蔓延る…"グランドライン"だ。」
「…は?」
鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をする花子に、面倒事はごめんだと眉間に皺を寄せた。