第8章 気になるあの子は
赤髪海賊団の宴も中盤に差し掛かり店を移る者、船に帰る者と様々である。ジルの店にはシャンクスを始め古参のメンバーしか残っておらず、落ち着いてきたジルは厨房を離れるとシャンクスの席に座り昔話に花を咲かせる。
「ところでジルさん、彼女は何者だ?」
「何だシャンクス。えらく花子の事を気にするじゃねぇか。」
くるくるとテーブルを回る花子を見つめ尋ねるシャンクスにジルは珍しいものを見るような目を向ける。
「まあ、彼女がって言うよりあの子と一緒にいた白い鯱が気になってな。」
「コハクを見たのか?」
「またまた入り江で。」
探るような目をするシャンクスにジルは花子との出会いを話す。するとシャンクスは不思議な事もあるもんだなと言うだけで深くは詮索しなかった。
「それにしても、ジルさんも丸くなったなぁ!」
「あ?何だ、突然。」
「それは俺も思った。」
可笑しそうに笑うシャンクスにベックマンもからかう様な目をジルに向けた。怪訝そうな顔をするジルに2人はテーブルにある料理を指差す。
「左腕無くしたお頭の為に食べ易い様、料理を切り分けたんだろ?」
「ロブスターの殻もちゃんと剥いて出してくれてるしよ。」
俺、愛されてる!と巫山戯るシャンクスに対しジルは呆れた顔で首を振った。
「それをやったのは花子だ。」
「え?」
「こっちの方が食べ易いだろうってな。俺は噛み千切ればいいといったんだが。」
そしたらあいつ、何て言ったと思う?と可笑しそうにジルは喉をくっと鳴らす。
ーその食い散らかした後の掃除するの私なんですけど。ー
「だとよ。」
「「「…。」」」
ポカンと口を開けるシャンクス達にジルは大口を開けて笑った。
「「「だぁはっはっ!」」」
「随分と可愛らしい理由だな!」
「あいつ、素直じゃねぇんだよ。」
きっと隻腕のシャンクスを気遣っての事だろう。その証拠に切り分けられた料理はシャンクスの近くに置かれていた。
「優しい子だな。」
「あぁ。優しくて、良い奴だ。」
お客と談笑をしている花子を2人は優しい眼差しで見つめていた。
(俺のどこが駄目なんだぁ~…?!)
(皆見る目無いですね~。)
(…はなちゃんは俺と付き合ってくれる?)
(えっ、ヤなんだけど。)