第8章 気になるあの子は
花子 side
お兄さんと別れた後、私は身支度を整えジルさんのお店に急いだ。
ーまた後で会えるさ。ー
別れ際のお兄さんの言葉を思い出す。
(まぁ、同じ島にいるんだからどっかでまた会うだろうけど。)
さして気にする事無く走っていればジルさんのお店には凄い人集り。何事かと思えば例の赤髪海賊団の人達が到着したみたい。
「花子、遅ぇぞ!」
「ごめんなさ~い!」
お店に入ればもう中はどんちゃん騒ぎでホールの子がてんやわんやしていた。取り敢えずこれ持ってけと渡されたジョッキを両手に急いでテーブルに向かう。
「お待たせしました~!」
「おぉ、ありがとう!」
ジョッキを渡せば聞き覚えのある声。はて?と思い顔を上げればそこにいる人物に驚いた。
「え?」
「さっき振りだな、可愛いお嬢さん。」
ジョッキを受け取り悪戯が成功した子供の様な顔をするのはさっき別れたばかりのお兄さん。
「え?何でお兄さんがいるの?」
「言っただろう。また後で会えるって。」
「お頭、知り合いか?」
「あぁ、さっき話した人魚のお嬢さんだ。」
状況に追い付いて行けず1度頭の中を整理する。まず今日は赤髪海賊団の人が来る、お兄さんの隣に座っている人が彼の事をお頭と呼んだ、お兄さんは海賊…。
「…あ。」
そこで私は前にペンギンが話してくれた事を思い出した。
ーいいかぁ~花子~。この世界には"四皇"っつって凄ぇ強い海賊が4人いるんだぞぉ~。ー
1人はマルコがいる白ひげ海賊団の白ひげ。後の2人は忘れたけど残りの1人が…。
「"赤髪"のシャンクスー?!」
「だぁ~はっはっはっ~!やっぱり気付いて無かったか!」
大口開けて豪快に笑うお兄さんは我慢出来ないと言う様にテーブルをバンバン叩いてお腹を抱えている。
「え?お兄さん海賊だって言ったじゃない!」
「俺は海賊だぞ?」
「赤髪海賊団の人ならそう言ってよ!」
しかもその船長だったなんて!ぷりぷり怒る私の手を取りお兄さんは目を柔らかく細める。
「悪かったな。お嬢さんの驚く顔が見たかったんだ。」
「…。」
甘える様なその視線に私はぐっと言葉を詰まらせた。
(…お兄さん、自分の事分かってるね。)
(さぁな。ところでお嬢さんの名前を教えてくれるか?)
(意地悪な人には教えませ~ん!)