第8章 気になるあの子は
花子 side
「こんにちは、可愛いお嬢さん。君は人魚かい?」
「…。」
岩場にしゃがみ込み私を見下ろす男の人に言葉を失う。燃える様な赤い髪、左目の3本の傷、くたびれたシャツの上から黒いマントを羽織りどう見ても一般人じゃない。
(どっかで見たような…。)
どこだっけ?そんな事を考えているとコハクがまるで男の人から私を守る様に彼との間に身体を割り込ませた。
「コハク?」
「ははっ!大丈夫さ、お嬢さんに危害を加える様な事はしない。」
柔らかく笑う男の人にまだ少し警戒している様子のコハク。やだっ!何、この子!良い子!
「コハク~、大丈夫だよ。ありがとう。」
「随分懐いてるな。お嬢さんのペットか?」
「ん~ん、私のお友達。」
私の言葉に気を良くしたのかコハクは甘える様に私に擦り寄る。
「ついさっきこの島に着いたんだが、良かったら話でもしないか?」
「いいよ。」
岩場に上がろうとすると男の人はすっと右手を差し出す。思わずそこに手を置けば彼は意図も簡単に私を海面から引き上げた。
「わっ…と、ありがとう。ごめんね、服濡れちゃった。」
「構わないさ。」
引き上げられた勢いで男の人に倒れ込んでしまった私を彼は優しく受け止める。身体を離すと何故か男の人はじっと私を見つめる。
「…。」
「?」
その視線を追えば行き着くのは私の胸元。コハクと遊んでいたから今の私は短パンとビキニだけの姿。
「…エッチ。」
「だぁはっはっ!すまん、すまん!」
胸元を両手で隠せば男の人は豪快に笑い私の頭を撫でる。近くに置いておいたパーカーを羽織り岩場に腰掛けると彼も隣に座った。
「お嬢さんはこの島の人か?」
「最近、この島に来たの。お兄さんは海賊?」
「…まぁな。」
見た目から一般人では無いと思ってたけどやっぱりね。
「だったら今日この島を縄張にしている海賊団が来るらしいから気を付けてね。」
「…お嬢さんは海賊が怖くないのか?」
「…分かんない。」
確かに悪い人達もいたけどロー君みたいに優しい人達もいるから一括りにするのは難しい。
「私にとって海賊も人だからその人個人だと思うの。」
「…。」
「だから、お兄さんは怖くないよ。」
そう言えば男の人は目を見開いた後、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「…ありがとう。」