第7章 この想いに終止符を
花子 side
ジルさんに助けられてあれから1ヶ月が経つ。私は海を漂っていた理由を思い出し全部ジルさんに話した。好きな人と別れる為に貨物船に乗った事、その貨物船が海賊に襲われて無我夢中で逃げてたら海に落ちちゃった事。
ーだったら此処にいたらいい。ー
ジルさんの家はジルさんと息子さん夫婦の3人暮らし。本業の漁師は息子さんに譲ってジルさんは夢だった酒場を経営してるらしい。私もそこをお手伝いさせてもらい、今ではお客さんとも顔馴染みになってきた。
「コハク~。」
名前を呼べば海面から真っ白スベスベな頭が飛び出した。私を助けてくれた白鯱は何故かこの場を離れる事無くずっと側にいてくれている。折角だから名前を付けようと思って、琥珀色の目をしているから【コハク】
「今日も良い天気だね~。」
私に答える様にコハクはスリスリと私に顔を擦り付ける。コハクといる様になって何と私は泳げる様になりました!
(今の私の姿を見たらロー君、驚くだろうなぁ。)
以前、泳げない私を巫山戯て海に放り投げたのは今でも忘れない。イルカ達がいなかったら私あのまま死んでたよ!
ーロー君…ひどいっ…!ー
ー…悪かった。ー
「ふふふっ!」
あの後、すっごく甘やかしてくれたっけ?思い出すのはロー君やハートの皆との思い出ばかりで我ながら未練たらしいと嫌になる。
ー忘れる必要はねぇんじゃねぇか?ー
ーえ?ー
ー俺もカミさんが先に逝っちまって悲しかったが、それだけじゃねぇ!倅達もいる、それに今度は孫も出来るんだ!ー
今じゃお墓の前で自慢話をしているって笑ってたジルさんは本当に強いなぁって思う。
(私にも出来るかな?)
いつか何処かでロー君達に会えたら笑って話し合えるかな?
「花子ー!ちょっと買い物付き合ってくれぇー!」
「はぁい!じゃあね、コハク!」
ジルさんに呼ばれてコハクに声を掛けた後、彼の元に急いだ。
(ねぇ、ロー君。私、やっぱり貴方が好き。)
今は無理かもしれないけど、いつか貴方にまた出会えた時、笑顔でいれる様に私強くなるね。
(だから…その時はまた私の名前を呼んでくれる?)