第6章 幸せと歯車
ロー side
酒に酔ったミラを連れ船に戻ると船番のクリオネがぎょっとした顔を見せる。俺の部屋に水を持って来る様に伝え船内に入りベットに寝かせると、酔いが回ったのか苦しそうに顔を歪める。
「うぇ~…きもちわるい…。」
「たく、慣れねぇ物飲むからだ…。」
そう言えば、前にもこんな事があったな。あれは花子がシャチと勝負だと飲み比べをした時か。
ー頭いたい…気持ち悪い…。ー
ー飲み過ぎだ、馬鹿。ー
水をくれ、頭を撫でろと甘える花子がいつもより弱々しく可愛かったのを覚えている。
「ろーさんは…おにいちゃんみたいですね…。」
「あ?」
「私…孤児院でそだったんですけど…そこにいたおにいちゃんも、私が風邪をひくとこうやって頭をなでてくれたんです…。」
思わぬミラの生い立ちにピタリと手を止めると、ふいに俺の手をミラが握り締めた。
ーお兄さまぁ~…何処にもいかないでぇ~…!ー
ラミも風邪を引くと泣きそうな顔で俺の手をぎゅっと握り締めていたな…。
「ろーさん…そばにいてくれますか?」
「…あぁ。」
そう言うとミラは安心した様に笑い眠りについた。
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花子 side
ミラちゃんの事が心配になって私は1人船に戻った。ロー君の部屋を訪れれば安心した様に眠るミラちゃんとそれを優しく見つめるロー君の姿。
「…ミラちゃん、大丈夫?」
「あぁ、只酒に酔っただけだ。明日は辛いだろうがな。」
馬鹿だと呆れながらもロー君の顔は凄く穏やかでその表情に胸が締め付けられる。
「あの…ロー君…「悪いな、花子。今日の予定は無しだ。」
私の言わんとしている事を察したのだろう。ロー君は振り返りもせず言い放った。
「え…でも、今日は…。」
「多分、明日は二日酔いだろう。薬も出してやらねぇと。」
「でも、それなら他の人でも…。」
「こんな状態のこいつを放って置けねぇ。それに俺がいなかったら、こいつも不安がるだろう。」
その言葉に全身が冷たくなるのを感じた。あぁ…貴方にとってその子が1番大切なんだね。
「…分かった。」
「悪いな…。」
私の方を1度も振り返りもしないロー君におやすみと伝え彼の部屋を出た。
(もう…いいや…。)
もう…どうでもいいや…。