第6章 幸せと歯車
ロー side
船を下り宿を取った後、花子と島を回るが俺は先程のミラの顔が頭から離れねぇ。
ーお兄さま!おまつり、行こうよ~!ー
30分だけだと言うのに俺と行くのを楽しみにいていたラミの姿とミラが重なる。
「ロー君?」
ぼぉっとしている俺を花子は心配そうな顔で見上げていた。
「大丈夫?疲れちゃった?」
「いや、大丈夫だ。」
俺は何を考えているんだ。楽しげに町を見ている花子をよそに頭に浮かぶのはミラの顔。
「あっ!ローさんと花子さんだぁ~!」
「?!」
「ミラちゃん?」
ミラの声が聞こえ目を向けた瞬間、俺は息を飲んだ。アイス片手に笑顔で駆け寄って来るミラの姿があの日のラミに見えた。
「見てください!ペンギンさんが買ってくれました!」
ーお兄さま、見て!お母さまが買ってくれたの!ー
「あんな顔をされちゃあ、買ってあげたくなるだろう。」
「むぅ~!私そんな食いしん坊じゃありません!」
からかうペンギンにむくれた顔をするミラの頭にそっと手を置いた。
「…良かったな。」
もし、ラミが生きていたら今もこうやって笑っていたのだろうか?
ーーーーーー
花子 side
アイスを買ってもらい嬉しそうにしているミラちゃんを見つめるロー君は凄く優しい顔をしていた。さっきまで楽しかった気持ちは一気に小さく萎んでしまう。
(楽しんでいたのは…私だけか…。)
ずっと上の空だったロー君はミラちゃんを見つけてから安心した表情を見せる。邪魔したら悪いと離れようとするイッカクやペンギンに私は笑顔で答えた。
「折角だから一緒に回ろうよ!」
「花子…いいの?」
「うん。特に買う物も無かったし大勢の方が楽しいから!」
ね?とロー君を見上げれば戸惑った顔をしたけど、嬉しそうなミラちゃんの顔を見ると諦めた様に頷いた。
「わぁっ!嬉しいです!早く行きましょう!」
「走ると転ぶぞ。」
「…。」
「花子…。」
はしゃぐミラちゃんをロー君は呆れた顔で見つめる。イッカクやペンギンが心配そうな顔で見つめてくるけど笑顔で答える。
「いいの。」
だって…私といる時よりロー君楽しそうにしてるでしょ?だから…いいの…。