第1章 普通の日常
花子 side
「大丈夫?どこも怪我してない?」
「大丈夫だよ。助けてくれて、ありがとう。」
目に涙を浮かべ私の身を案じてくれているイッカクに、人質に取られながら彼女の船長で下種な想像をしていた事を心の中で謝っていると、イケメンが近付いてきた。
「無事か、イッカク。」
「キャプテン!…本当にすみません!」
「面倒事を起こすな。」
頭を下げるイッカクにイケメンが悪態を付くもその表情は柔らかく、本当に彼女の事を心配していたんだと言う事が分かる。
「で…この女はなんだ。」
「そうだ!キャプテン、花子もこいつ等に拐われてきたみたいなんですよ!」
私の肩を掴みイケメンの前にずいと押し出すと彼はだから何だと言いたげに顔を顰める。
(まぁ、それが普通の反応だよね~。)
「キャプテ~ン!こっちは片付いたよ~!」
「ベポ。」
顰めた顔もイケメンだなぁっと顔を眺めていると、彼に声を掛ける白い物体。
「熊?!…の着ぐるみ?」
「俺は着ぐるみじゃないぞ!」
「だって…喋って…?!」
「すみません…。」
(えぇっ?!何で謝るの?)
いきなり落ち込んだ様子の白熊君に私が戸惑っていると、後ろから打たれ弱っ!?と言うツッコミが聞こえた。さして気にしていないイケメンとイッカクを見るに、これが日常の様だ。
「えっと、白熊君?ごめんね?傷付けるつもりじゃ無かったの…。」
「俺はベポだよ。俺もごめんね。」
しょんぼりと頭を下げるベポ君が何だか可愛くて、じゃあお合いこだねと頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めている。
(…可愛い。)
「おい、必要な物は奪ったら長居は無用だ。ずらかるぞ。」
「でもキャプテン…花子が…。」
「そこまでは面倒見きれるか。もうじき海軍も来る。他の女共と一緒に保護してもらえ。」
イケメンの言う事は最もだ。イッカクとは仲良くなったがそこまでお世話になる理由もない。心配そうに私を見つめるイッカクに大丈夫と微笑み掛けた時、彼女の背後で何かが光った。
「?!危ないっ!」
「っ!花子?!」
鳴り響く銃声。イッカクを突き飛ばしたと同時に肩に激痛が走った。
(撃たれ…た…?)
私の人生は本当に普通だったと思う。でも…。
(最後に…友達を守れて死ねるなら…良い人生だったのかな…?)