第6章 幸せと歯車
花子 side
地獄の朝食を終え食器を片付けているとミラちゃんが手伝うと言ってくれたが丁重にお断りさせてもらった。イッカクに目配せすると察してくれた彼女はミラちゃんを連れキッチンから出て行った。
「寝坊なんて珍しいな。どうしたんだ?」
「…ちょっと眠れなくて。」
流石に貴方達の会話を聞いて眠れませんでしたとは言えず曖昧に答えるとシャチがからかう様に口を開く。
「もしかして花子、最近キャプテンを盗られてるから意地悪しちゃった~?」
「そんな事花子がする訳無いだろ~!」
もしそうだったら引くわぁっと何気無しに言われた言葉。いつもなら言い返せるのに今は彼等の言葉が胸に突き刺さる。
(何よ…大体こうなったのは誰のせいだと…!)
「花子?」
「…本当に寝坊しちゃっただけなの。ごめんね、今度から気を付けるね。」
「まぁお前も疲れ溜まっているだろうし、気にすんな!」
優しい皆の言葉。嬉しい筈なのに私の中でドロドロと黒い感情が渦巻いている。
ーーーーーー
仕事を終えた後、私はロー君に呼び出された。多分、今朝の事なんだろうなぁと思い部屋を訪れるとロー君はソファーに腰掛け不機嫌そうな顔をしている。
「お前、最近可笑しいぞ。」
「…そんな事無いよ。」
へらっと笑い曖昧に答えると眉間の皺を更に深くする。何も言わない私に諦めたのか深い溜め息を漏らすと隣に来る様に言われたので、無言で彼の隣に座るとロー君は優しく私の頬を撫でる。
「今日、島に着く予定だ。」
「そっか。」
「…一緒に回るか?」
思わぬ彼からのお誘いに思わず目を見開く。えっ?私と一緒にいてくれるの?あの子といなくていいの?
「…いいの?」
「駄目だったら誘わねぇよ。」
ふとロー君の目元が柔らかくなるのを感じた。まだ私にそんな表情を向けてくれるのが嬉しくて、泣いてしまいそうになるのを誤魔化す様に私は彼に抱き着いた。
「嬉しい…。」
すっと息をすればロー君の香りが鼻に広がる。抱き締め返してくれるのが嬉しくて彼を抱き締める腕の力をぎゅっと強めた。
(そんなに嬉しいのか?)
(うん!)
(…島に着いたら宿でも取るか?)
(うん!…ん?)