第6章 幸せと歯車
花子 side
ー花子を誰が落とすかってやつですか?ー
楽しそうに話す皆の声が頭から離れない。そっか…だから皆あんなに優しくしてくれたのか…。でも、何より悲しかったのは。
ーミラにもそんな賭けすんじゃねぇぞ。ー
釘を刺すようなロー君の言葉。きっと彼は私の時にもその賭けが行われている事は知っていた筈。むしろあの口振りはロー君も参加していたんだと思う。
(そんなにあの子が大切なんだね…。)
私の時には一緒になって楽しんで…本当に大切な子は傷付けたくないんだ…。ロー君との思い出が走馬灯の様に頭を駆け巡る。扉に誰かの気配を感じ私は慌てて離れ無我夢中で女部屋に駆け込んだ。
(眠れない…。)
頭から布団を被り目を閉じても繰り返されるのはさっきのロー君達の会話。早く寝て忘れたいのに私は中々寝付けずにいた。
ーーーーーー
「…はっ?!」
いつの間に寝てしまったんだろう。目を開ければもう外は明るく日が射していた。慌てて飛び起き隣のベットに目を向けるといる筈のイッカクとミラちゃんの姿は無い。
「やっばい!寝過ごした!」
朝食の手伝いをするのは私の日課になっていた。秒速で着替えを済ませ私は慌ててキッチンに急いだ。
「ごめんなさい!寝過ごし…た?」
「「「…。」」」
謝罪をしながら中に飛び込むとキッチンはまるでお通夜状態。訳が分からず首を傾げる私を見つめる皆の顔は心なしかゲッソリとしていた。
(え?てか、何あれ…?!)
皆のお皿に乗っかっているおにぎりは何かこう…べちゃっとしていて正直美味しそうに見えない。
「あっ!花子さん、おはようございます~!」
「おはよう、ミラちゃん。…あれは?」
「花子さん、なかなか起きてこなかったので私が代わりに作っておきました!」
皆さん美味しいって言ってくれました!と嬉しそうに差し出されたお皿には見るも無惨なおにぎり。
「あぁ…ありがとう。」
「いいえ!お疲れでしょうから!」
引き攣った笑顔で受け取りコックであるクジラに目を向ければ、すまんとジェスチャーで謝られた。
(ローさん、美味しいですか?)
(…あぁ。)
(良かったです!)キラキラ
(…。)