第6章 幸せと歯車
花子 side
「少しの間、この船に乗る事になった。」
「ミラです!よろしくお願いします!」
ロー君に紹介された女の子は可愛らしく頭を下げた。先日、別の海賊と交戦になりその船に捕まっていたのが彼女。年は15歳でふわふわとした栗毛を2つに結び、くりっとした黒く大きな瞳は女の私が見てもとても可愛らしい。
「何かあれば手伝ってやれ。」
「「「アイアイ!キャプテン!」」」
ミラちゃんの紹介が終わるとクルーの皆は我先にと彼女に群がる。その姿がまるで飢えたハイエナの様でちょっと引いた…。
「たく…あいつ等は…。」
「ふふっ、とっても可愛い子だね。」
私にはお姉ちゃんしかいなかったから何だか妹が出来たみたいで嬉しい。呆れるロー君を見上げるとふと彼の表情に違和感を覚える。
「ロー君?」
何で、そんな顔してるの?皆と話すミラちゃんを見つめるロー君の表情はとても柔らかく…愛しいものを見つめる目だった。
ーーーーーー
私は今、大いに機嫌が悪いです。その訳は…。
「おい、ミラ。そんな重い物を持つな。」
「…。」
「おい、誰が釣りをしていいと許可を出した。」
「…。」
「危ねぇから柵には近付くなよ。」
先日から船に同乗したミラちゃん。彼女が来てからロー君は暇さえあれば、ミラ、ミラ、ミラ!確かにミラちゃんは可愛いけど…!
(だからって…過保護過ぎじゃない?!)
他の皆も無邪気な彼女が可愛いのか何かと世話を焼いていて、何だか自分が乗った当初を思い出す。
「わっ!」
「花子さぁん~!」
ロー君達の遣り取りをぼぉっと眺めていると、ミラちゃんがうんざりだと言う顔で私に飛び付いてきた。
「ローさん、何とかしてくださいよぉ~…!」
「おい、ミラ!そんな勢いよくぶつかったら危ぇだろ!」
私の心配は無しかい…。まぁ分からないでも無いけど。拗ねた様子で私を見上げるミラちゃんは本当に可愛い。さっきまで荒んでいた気持ちが嘘の様にほっこりとする。
「ロー君もミラちゃんの事、心配してるんだよ?」
「分かってますけどぉ~…。」
鬱陶しいです!とポツリと呟いたミラちゃんに対し、ロー君がぐっと眉間に皺を寄せ思わず笑ってしまった。