第6章 幸せと歯車
「キャプテンはくっ付き過ぎです!」
「あ?」
ポーラータング号の賑やかなキッチン。皆、夕食を取っている中、イッカクがドンとテーブルを強く叩き付け正面に座っているローに口を開いた。
「何だ、突然。」
「言葉通りです!」
「どうしたの?イッカク?」
ムッと顔を顰め自分を睨み付けるイッカクにローは何事かと首を傾げ、彼女のただならぬ雰囲気に花子も不安そうな顔をする。
「暇さえあれば花子にベタベタと…!」
「何か問題でもあるのか?」
「大有りです!」
「…。」
イッカクの意見は最もだ。あの日以降、ローは暇さえあれば花子の元を訪れ何かにつけて引っ付いている。今も彼女を後ろから抱き締め肩に顎を乗せたまま口を開け、食べさせろと催促をしている。付き合えた喜びに浮かれていたが、確かにこのままだと船内の風紀に係わる。何か改善をせねばと花子は考えていると、またイッカクが口を開いた。
「私だって、花子にくっ付きたい!」
「「「…。」」」
「最近、いつもキャプテンが独占してるじゃないですか!私だって花子と話したい、一緒に寝たいです!」
「当たり前だ。こいつは俺の何だから。」
「…!」
勝ち誇ったローの顔にイッカクは悔しそうに顔を歪めた。俺のものと言う言葉に心をときめかせている花子を周りは生暖かい目線を向ける。
「だから、今日は私に花子を貸してください!」
「あ?ふざけんな。駄目に決まって「いいよ。」
「…おい。」
ここ最近ローの部屋で寝泊まりしている花子。確かにイッカクとゆっくり話してないと思った彼女はローの声を遮り頷く。
「本当!?」
「うん。今日は一緒に寝よう。」
「待て、俺は許可出して「お願い、ロー君。」
ローは花子のこの顔に弱い。小首を傾げ見上げてくる彼女は可愛らしくローの中の庇護欲を掻き立てる。
「…今日だけだぞ。」
「ありがとう。」
こうなれば折れるのはローの方だ。案の定、凄く不満そうだが頷いた彼に花子は微笑みかけると、ローの頬にそっと自分の頬を寄せた。
(…明日、覚えてろよ。)
(聞こえなぁ~い!)
(((…。)))キャプテン…尻に敷かれてるぁ…
(やったぁ~!)