第5章 そばにいれたら
花子 side
私が目を覚ましたのは夕方ぐらいだった。姿を現さない私に皆凄く心配してくれてたみたいで何だか申し訳無い。あの後、イッカクに話を聞くとロー君との事はもう皆にバレているみたいで、その事を知った時は恥ずかしさで海に身を投げ出しそうな程だった。
『キュゥ~、キュゥ~!』
『クゥ~!』
「ふふっ、ありがとう。」
船の柵に身を乗り出すといつもの様にイルカや鳥達が贈り物を届けてくれた。船大工が作ってくれた贈り物を入れるバケツを海面に下ろすと、イルカ達はせっせとその中に咥えている物を入れる。
「今日もご苦労な事だな。」
「ロー君。」
バケツを引き上げているとロー君が後ろから私を抱き締め引き上げたバケツの中を覗き込む。甲板に置いてある箱に目を移すとそこにも色んな薬草が沢山。
「嬉しそうだな。」
「こんなに毎日熱烈なアピールして貰ったら嫌なわけ無いじゃない。」
「…。」
イルカや鳥達にお礼を伝えているとロー君は不満そうな少し拗ねた顔を見せる。その顔が可愛くて思わず笑ってしまうと、ヒヤリと首筋に冷たい感覚があった。
「これ…。」
「…やる。」
胸元に目を向けるとそこにはあの日ロー君に投げ付けたグレースピネルのネックレス。それは綺麗に加工され朝日に照されキラキラと輝いていた。
「こいつ等ばっかりに良い格好させられねぇからな。」
驚きロー君の方に振り返れば帽子の鍔を目元まで下げる。その行動が照れ隠しと知ったのはつい最近の事。そんなロー君に愛しさが込み上げて私は勢いよく彼の胸に飛び込んだ。
「ありがとう、ロー君!凄く嬉しい!」
「当たり前だ。…無くすんじゃねぇぞ。」
そんな事するわけ無いじゃない!そんな意味を込めてロー君の顔を引き寄せ頬にキスすると、ロー君はふっと優しく微笑み私の頬を両手で包み込んだ。
「礼ならこっちだろ。」
「ん…。」
優しく触れる唇。今、この幸せを私は精一杯噛み締めた。
(ふぅンッ…はぁっ…)
(なぁ…今夜…)
《ギャー、ギャー!》《キィー、キィー!》
(…チッ、うるせぇな!)邪魔すんな!