第5章 そばにいれたら
ポーラータング号の朝は賑やかだ。しかし、今朝はいつにも増して慌ただしい。その原因はと言うと。
「「「花子がいない?!」」」
「そうなんだよ!昨日、ベットに入るまでは見たんだけど、今朝起きたら何処にもいないんだよ!?」
朝、イッカクが目を覚ました時には既に花子の姿は無かった。多分、朝食の準備をしているのだろうと思い、準備を整えキッチンに向かうがそこに彼女の姿は見当たらない。
「風呂じゃねぇのか?」
「それか倉庫に何か取りに行ったか。」
「全部、確認したよ!でも、何処にもいないんだ!」
船の何処にもいない。最近、元気の無かった花子の様子。考えられるのは…。
「「「いやいやいやいやっ!」」」
「流石にねぇだろ!」
「きっとどっかで油売ってんだよ!」
「でも最近花子、思い詰めた感じだったよ…。」
「「「…。」」」
ポツリと呟いたベポの言葉に全員が顔を青くする。急いで旋回しろ、まずはキャプテンに報告だと騒いでいると、キッチンの扉が開く音が聞こえた。
「朝から騒がしいな。」
「「「キャプテン!」」」
部屋に入ってきたローに全員がバタバタと駆け寄る。そんな彼等にローは鬱陶しそうに顔を顰めながら側にいたペンギンに珈琲を頼む。
「呑気に珈琲飲んでる場合じゃ無いですよ!大変何です!」
「キャプテン!花子が何処にもいないんですよ!?」
「花子なら俺の部屋だ。」
「「「え?」」」
矢継ぎ早に口を開き詰め寄ってくるクルー達をよそにローは平然と言い放った。
「キャプテンの部屋?」
「あぁ、ぐっすり寝てやがる。暫くは起きてこねぇと思うから飯は残しとけ。」
「「「…。」」」
ローの部屋、暫く起きて来ない。そんな意味深な言葉に全員彼に目を向ける。当の本人は気にする事無く優雅に新聞に目を通していたが、何か思い出した様に顔を上げた。
「そうだ、お前等。あの賭け、俺の勝ちだ。」
「「「?!」」」
「はぁ…。」
ニヤリと笑みを浮かべたローはよく見ればスッキリとした顔をしている。何かを察したペンギンだけが重い溜め息を漏らした。
(因みに聞きますけど…無理矢理じゃ無いですよね?)
(あぁ、同意の上だ。)
(((…。)))
(花子、見付かって良かったねぇ~!)