第1章 普通の日常
花子が消えた扉を見つめイッカクは焦っていた。自分と違い海賊など知らない様な少女。傷付いて欲しくない。先程知り合ったばかりの花子に何故そんな事を思うのか、イッカク自身も分からなかった。
(でも…花子は…。)
ーじゃあ、イッカクも海賊なの?ー
ーそうだよ!私はハートの海賊団のクルーなんだ!ー
ーそっか。ー
ー…私が、怖い?ー
好きで海賊になったのだから嫌悪されるのには慣れている。しかし、ふと思う。もし、海賊じゃなく…普通の女の子だったらと。
ー別に、イッカクはイッカクでしょ?ー
ーえ?ー
ー正直、海賊ですって言われてもピンとこないし。その…なんちゃら海賊団のクルー以前に、貴女はイッカクって言う1人の女の子でしょ?ー
(嬉しかった…。)
まるで、あの時間の時だけ普通の女の子でいられた様な気持ちになったイッカクは、知らぬ間に花子に絆されていたのだ。
「?!」
どうやって花子を助け出すか思考を凝らしていると、突然大きな爆発音と共に船体が大きく揺れた。外ではバタバタと慌ただしい足音と怒号が響き渡る。悲鳴を上げる女達をよそに先程花子が出ていった扉が開いた。
「えぇ~と…。うわぁ~!女の子がいっぱいだっ!」
「馬鹿!それどころじゃ…うほぉ~!本当だぁ~!」
部屋に入ってきた人物は拘束されている女達にダラしなく鼻の下を伸ばす。
「シャチ!ペンギン!」
「おぉ~!いたいた、イッカク!探したぞ~!」
「お前、何捕まってんだよ~!」
からかうように笑いながら近付く2人にイッカクはホッと顔を綻ばせた。
ーーーーーー
花子 side
なんと言う事でしょう。先程まで何事も無かった景色が…。
(地獄絵図っ!?)
外に放り出され私を下卑た笑みで見下ろしていた海賊?達は今や肉塊と姿を変えていた。しかもどう言うトリックなのかは分からないけど、切り離された手足、頭、胴体は独りでに動いていて下手なホラー映画より怖い。
「おい!それは俺の足だ!」
「ぎゃぁああぁっ?!斬られ…生きてる?!」
(阿鼻叫喚…。)
切り離されたパーツは元に戻る事は無くこれまた独りでに別の身体にくっ付けられ改造されていく。非現実な光景に私は目眩がするのを感じた。