第1章 普通の日常
花子 side
イッカクは色々私に教えてくれた。今、私達がいるのは最近名のある海賊らしく、彼等は主に女性を拐って人身売買を生業としているらしい。
「…ちょっと、待って。話に付いていけない…。」
海賊?そんなの海外じゃあるまいし…。海外でもいるかどうか怪しいところだけど。
「でも、大丈夫!キャプテンが必ず助けに来てくれるから!」
「キャプテン?」
キャプテン?誰だよそれ?自信満々に豪語するイッカクに首を傾げると彼女は誇らしげに語り出す。
「キャプテンは凄く強いんだ!きっと私が捕まったと知ると必ず助けに来てくれる!」
「…信頼してるのね、その人の事。」
目を輝かせ大きく頷くイッカクに、そこまで信頼できる人がいて羨ましく思う。暫くイッカクと談笑していると、暗い部屋の中に光が差し込んだ。
「女共!出てこいっ!」
いかにも悪者ですって顔の男の人の声が響く。恐怖で動けずにいる女の人達を乱暴に立ち上がらせるその行動に眉間に皺が寄った。
「ちょっと!私達、商品なんでしょう?そんな乱暴に扱っていいの?」
「あぁ?何だ、てめぇ!」
「ちょっと、花子!」
思わず声を上げてしまった私に男の人は不快そうに顔を顰め、イッカクが慌てた様子で私を宥める。
「てめぇ、舐めた口利いてんじゃねぇぞ?」
「っ!いや…ほら、余り乱暴に扱って傷を付けると、商品価値が…ね?」
ドカドカと音を立て歩み寄ってきた男の人は腰に差した剣の切っ先を私の喉元に向ける。命の危険に晒され急に怖くなった私は震えてしまいそうな声を押し殺し口を開く。
「随分と威勢がいいじゃねぇか。まずはお前からだ!」
「わっ?!」
「花子っ!」
「騒ぐんじゃねぇっ!」
「逆らったら命は無いと思えよっ!」
胸倉を捕まれ私は引き摺られる様な形で外に放り出された。
(私の人生…短かったなぁ…。)
せめて…幸せな家庭を築きたかった。目に浮かぶのは優しい両親、そして幸せそうなお姉ちゃん家族の姿。
(来世では…ちゃんとしよう。)
でも…そんな事より…。
(マスター…許すマジっ!)
末代まで祟ってやる…!