第36章 新たな仲間、ポジション変更?
海が見える丘に腰を下ろしレイリーは物思いに更けていた。彼はふと手に持っている手配書に視線を移す。
「まさか…また君に出会えるとはな…。」
その手配書は先日出た花子の物だった。にっこりと笑顔で写る彼女の写真を見つめる彼の表情は穏やかだが、ポツリと呟かれた声はどこか淋しげである。
「レイさん、ここにいたのね。」
「シャッキーか。」
ゆっくりと彼に近付くのはぼったくりバーを経営しているシャクヤク。彼女は煙草を燻らせながらレイリーが持っている手配書を覗き込む。
「あら、それ彼女の物ね。」
「あぁ、とても可愛らしいのでな。つい魅入ってしまったよ。」
戯けた様に口を開くレイリーにシャクヤクは怒るでも無く穏やかな表情を浮かべている。
「彼女、今はモンキーちゃん達と一緒にいるのよね?」
「あぁ、確か"ワノ国"にいる筈だ。」
初めて花子と出会ったのはヒューマンオークションの牢屋の中だった。初めて会った筈なのにどこか懐かしさを覚える…不思議な雰囲気の女だった。
「…。」
「何か、思い出してるの?」
「…いや。」
この年になっても若い娘と浮ついた話があるレイリーだったが、花子を見つめる瞳がそれとは別の何かがあるとシャクヤクは感じていた。
「思い出した…と言う方が正しいかもしれない。」
ふとレイリーはロジャーと最後に交わした言葉を思い出す。海軍に自首するあの日…別れ際にロジャーはレイリーに尋ねた。
ーなぁ…相棒…俺は、何か大事な事を忘れている気がするんだ。ー
その時は何の事を言っているか分からなかった。しかし、花子と出会いレイリーは自分の中に生まれた違和感を感じていた。
ーレイリーは心に決めた女性はいるのかい?ー
ー…何だ急に。ー
ー君はモテるから。ー
怪訝な顔でお前はどうなのかと尋ねるレイリーに対し彼は目を細め愛おしそうな顔で口を開いた。
ーいるよ…ずっと一緒にいたいと思える人が。ー
(今なら…君の気持ちが少しは分かる気がするよ。)
穏やかな顔で自分を見つめるレイリーにシャクヤクは首を傾げる。誤魔化す様にレイリーはまた花子の手配書に視線を移した。
(史郎…君はその女性と幸せになったのかい?)