第35章 決戦の時
敵戦艦に突っ込んで行くルフィとキッドをぼぉっと眺めている花子をナミがぎゅっと抱き締めた。
「花子っ…無事で良かったっ…!」
「ごめんね…心配かけて…。」
たわわに実ったナミの豊満な胸を顔に押し付けられ役得だなどと考えてながらも、微かに震える彼女の肩に花子は申し訳無さそうに眉を下げる。
「本当にっ!あんたはどうしてそうホイホイ拐われるのよ!」
(好きで拐われてる訳じゃ…。)
花子の頬を引っ張り小言を言うナミに不可抗力だと思いながら、今ここで反論すれば彼女の雷が落ちると甘んじて受け入れた。
「花子〜!本当に良かったぁ〜!」
「チョッパーさんっ!」
ぴょんと自分に飛び付き涙を流すチョッパーに花子の胸はきゅうぅんっと高鳴る。おいおい泣くチョッパーを抱き締めふと周りを見渡すと、そこにはキャロット、そしてワンダやシシリアン達の姿。
(…あれ?)
彼女達がいると言う事は彼もいる筈。しかし、何処を見渡しても花子の探す人物の姿は無い。
「ねぇ、ナミちゃん。ペドロさんは何処にいるの?」
「…っ!」
別の所にいるのだろうかと尋ねる花子にナミ、そしてサンジやチョッパー、キャロット達はぐっと唇を噛んだ。
「…花子、よく聞いて。」
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花子 side
ーペドロは…ビッグ・マムから私達を逃がす為に死んだの…。ー
ペドロさんが…死んだ…?言葉の意味を理解出来ず混乱している筈なのに何故か頭は冷静だった。
ー次に会う時は…一緒に散歩をしよう。ー
「…そっか。」
「花子…。」
短くポツリと呟いた私をチョッパーさんが心配そうに見上げる。大きなつぶらな瞳に写る私は凄く情けない顔をしていた。
「ペドロさんは…自分の出番を見付けたんだね…。」
彼が幼い頃に海賊王が"ゾウ"を訪れた時、自分も連れて行ってくれとお願いするペドロさんに彼は言った。
ー人には必ず【出番】ってものがあるんだ!ー
その出番が来るまで…いつか来る【世界の夜明け】を見届けるまで自分は精一杯生きると話していた。
(ねぇ…ペドロさん…私、歩ける様になったよ?)
貴方とお散歩をする事は出来なかったけど…貴方の分まで私は精一杯生きるね…。
(私の…【出番】が来るまで…。)