第35章 決戦の時
仲間と再会し戯れている花子を柔らかい眼差しで見つめていた傅ジローは、錦えもんに視線を移す。
「しかし錦さん!流石は頭がキレれる男!」
「ん?」
傅ジローは羨望の眼差しで錦えもんを見つめ集合場所を図案した紙を取り出す。元の絵に2つの線は無かったが情報が漏れ自分の命と引き換えにした康イエにより判事絵は書き換えられた。
「新たに加えられた2本の線は腹の絵を消す事を意味する文字抜き!」
【はぶみなと】の中を抜くと【はと】になる。つまり新たな集合場所はハブ港の波止。しかし、傅ジローはオロチの内通者がいると察した錦えもんが身内にだけトカゲ港と読み違いをして見せたと言う。
「内通者はまんまと騙されオロチにはトカゲ港だと伝えたのだ!」
そんな思惑があったのかと、イヌアラシ達はまんまと騙されたと感心する。彼等の声に錦えもんはピクリと肩を震わせた。
「長く都にのさばった権力者の愚かしさ!オロチは土地の距離感を見誤り行動を起こしたのは昨夜!」
オロチが退路を断った時には既に全員大橋を通過して必要な船だけで出港していた。壊されたのはのはいらない船。錦えもん達が集めた4千の兵は作戦通りハブ港の波止に身を隠しこの時を迎えた。
「じゃあ…皆無事で…!」
仲間の無事に安堵する菊之丞は目を見開いた。彼の瞳に映るのはヒョウ五郎を筆頭に雄叫びを上げる4千の兵を乗せた無数の船。
「錦さん!流石は俺等のリーダー!あんたは尊敬にあたいする!」
彼を称賛する声に錦えもんの顔がヒクリと引き攣る。彼は本気でトカゲ港が集合場所と思っていたのだ。
「…ん?ちょっと待って。」
海を覆い尽くす程の船に圧巻されているルフィ達をよそに花子ははてと首を傾げる。オロチが指示を出す頃には既に兵は大橋を渡り海に出ていた。となると…。
「私の努力っ!?」
「うおっ?!」
腕の中にいる花子がいきなり大声を上げキッドは怪訝な顔で彼女を見つめる。花子は気にする事なく恨めしそうな目で傅ジローを睨んだ。
「酷い!狂死郎さん!だったら私身体張る必要なかったじゃん!」
「いや、あの時点では危なかった。花子殿の行動が功を制したのだ!」
上手く丸め込まれている気もすると納得のいかない表情を浮かべる花子の肩をポンと誰かの手が乗る。