第35章 決戦の時
仲間だと思っていた狂死郎がまさかの傅ジローだったとは。予想外の事実にカン十郎は動揺を隠しきれなかった。
「錦さんの帰還を知った時、直ぐにでも名乗り出たかったが…万が一の事を考え敵であり続けた。」
傅ジローの予想は間違ってはいなかった。もし、名乗り出ていれば内通者であるカン十郎に正体をバラされ彼はオロチに消されていた。
「だが、最後までオロチの信頼を得た事で羅刹町の千人の侍を解放する事が出来た!」
狂死郎一家の船の後ろから無数の船が姿を現す。その帆には1つ1つ家紋が記されており、1200もの兵が打倒オロチを掲げ奮起していた。
「それともう1人!重要な人物を連れて来た!」
「重要な人物?」
此れ程の兵が仲間になり更にまだ何かあるのか。唖然としている錦えもん達をよそに傅ジローは誰かに声をかけた。
「皆っ!」
「花子っ!?」
そこにはカイドウに拐われ鬼ヶ島にいる筈の花子の姿があった。
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花子 side
まさか狂死郎さんが錦えもんさん達と同じおでんさんの家臣だったとは…。オロチの城を後にした私達は狂死郎さんの船に乗り込んだ。
ー…花子殿。ー
時間稼ぎしていたのがバレたのかと背筋が凍った。私を壁に追い詰め逃すまいと顔の横に手を付き無表情で見下ろす狂死郎さんに、きゅっと目を瞑るとカシャンと音をたて首輪が外された。
ーよくぞやってくれ申した!ー
(あの時の狂死郎さん…めっちゃ怖かったっ…!)
いやさぁ…褒めてくれるのは嬉しいけどだったらもっと嬉しそうな顔をしてよ?!殺されるかと思ってチビりそうになったよ!?
「お嬢さん、親分が呼んでます。」
「はぁい…。」
子分の人に呼ばれ私は狂死郎さんに隣に移動した。そこには会いたくて仕方無かった皆の姿。
「皆っ!」
涙が出そうになるのを堪え笑顔を向けると、ルフィ君が私に腕を伸ばす。
「…"シャンブルズ"」
「みぎゃあー?!」
「トラ男っ!てめぇっー!?」
でもルフィ君が私を掴む事はなく急に視界が一変し逞しい腕が私を強く抱き締める。
「ロー…君…?」
「花子っ…!無事でっ…良かったっ…!」
絞り出す様な声、背中に回った腕は微かに震えていた。顔を上げれば今にも泣き出しそうなロー君の顔に胸が切なくなった。