第35章 決戦の時
ルフィ、ロー、キッドの奮闘により百獣海賊団の戦艦1隻は潰された。彼等の強さを目の当たりにした百獣海賊団の者達が狼狽えていると、1隻の船が彼等に近付いて来る。
「あれは…狂死郎一家の船!?」
「狂死郎も現れたか!」
帆には【狂】の文字。思わぬ援軍に百獣海賊団、カン十郎は勝利を確信した様に笑みを浮かべる。1度彼と刀を交えたゾロは狂死郎の強さに強敵だと気持ちを引き締めた。
「赤鞘を沈めればいいんですけど…思ったより手古摺っちまって…。」
「そうか…敵を沈めるんだな…任せろ…!」
船の残骸の上で喧嘩をしているルフィ達を見つめきゅっと目を三日月型にし狂死郎が刀に手をかける。大きく振り上げられ放たれた斬撃は船を真っ2つに斬り裂いた。
「「「えぇーっ?!」」」
「あやつ…一体なんのつもりだ?!」
しかし、狂死郎が斬り裂いたのは打倒カイドウを掲げる船ではなく百獣海賊団の戦艦だった。予想外の彼の行動に百獣海賊団やカン十郎のみならず、ルフィ達も驚愕していた。
「赤鞘のお侍さん方。拙者、花の都のヤクザ者…ひと呼んで居眠り狂死郎と申す。我等、狂死郎一家2百名!あんた方に助太刀させていただきたい!」
何故、オロチの手下である彼が錦えもん達に手を貸すのか?自分達に何の義理があると言うのか。
「…義理も恩も…光月家には計り知れない程ござんすっ…!」
40年前、都で起きた山の神事件。世間はおでんの暴走と理解していたが…真実は若き日の錦えもんが欲に溺れ小猪を売ろうとし起こした事件だった。都で暴れ回る山の神を倒したのはおでんだったが、都は半壊。その事件の真相を知るのは今や只1人…。
「もしや…お主っ傅ジローかっ?!」
「生きてっ…いたのかっ!」
おでんが処刑された日、オロチの追手から逃げ延びる際、錦えもん達を逃がす為に彼とアシュラ童子が殿を務めた。その後の彼の消息は分からなかったが…。
「いかにも!光月家が家臣、赤鞘九人男の1人!傅ジロー!」
変装の為か被っていたリーゼントの鬘を取った狂死郎の頭からは1つに結ばれた長い青髪がたなびく。以前の黒髪では無いがその姿は間違いなく自分達の知る傅ジローの姿だった。