第35章 決戦の時
いつも優しく分け隔てなく接する史郎の事をカン十郎も慕い、彼の心に変化が訪れた。この者なら自分の過去を打ち明けても受け止めてくれるのではないかと…。
ー僕には関係の無い事だ。ー
ある日、迫害を受けていた者が史郎に助けを求めた。しかし、彼は手を差し伸べる事無く冷たくその者を突き放した。
(此奴も…同じか…。)
いくら取り繕うとも結局は彼も他の者と同じなのだと。信じていた者に裏切られカン十郎は更に心を閉ざす様になった。
「こうなるまで…何故身内を疑わなかった!」
ー僕は君の事を信じているよ。ー
優しく微笑みそう言った史郎にカン十郎の中に言い様のないドロドロとした感情が湧き上がった。止めろ、自分の心の中に入って来るなと。
「おかしかった筈だ!ずっと!何もかも!」
荒れ狂う海に現れたのは百獣海賊団の海賊船。小舟で鬼ヶ島を目指そうとしている錦えもん達を嘲笑う声が無情に響き渡る。
「っ!カン十郎ーっ!!」
怒りに任せ刀を抜いた錦えもんがカン十郎の首を刎ねる。しかし、それはカン十郎の能力により作り出された分身。本物はモモの助としのぶがいる港に身を潜めていた。
「モモの助様ぁー!?」
「オロチ様はこうもおっしゃった!モモの助を連れ鬼ヶ島に来いと!」
モモの助を抱え逃げようとするしのぶをカン十郎が作り出した蛇が拘束する。投げ出されたモモの助を捕らえカン十郎は笑みを浮かべる。絶対絶命の状況にここまでかと錦えもん達が諦めかけた時、1門の大砲が百獣海賊団の船を攻撃した。
「悪ぃ!ちょっと遅くなった!」
そこに現れたのはサニー号、そして麦わらの一味の姿。敵の船は全て沈めた筈なのに何故彼等がここにいるのかと百獣海賊団は動揺を隠しきれずにいる。
「いかんっ!船が限界だっ!」
限界を向かえた小舟に穴が開きこのままでは荒波に飲み込まれてしまう。万事休すかと思った時、海底から何かが盛り上がってきた。
「海を舐め過ぎだ!侍共!」
「おい!向こうの港に馬鹿みてぇに船と侍が集まってたが…ありゃあ何だ?」
海底から現れた潜水艦が小舟を押し上げ、逆からは百獣海賊団を攻撃しながら1隻の海賊船が近付いてきた。
「結局来たのかよ!ギザ男!」
「麦わらっ!カイドウの首を取るのは俺だ!」
「チッ!」
ルフィ、キッド、ロー。3人の最悪の世代が今はここに集結した。