第35章 決戦の時
花子 side
「オロチ様ぁ〜、こちらでございます〜!」
「どこじゃ、どこじゃあ〜?捕まえてやるぞぉ〜!」
この殿様はアホなんだろうか…。目隠しをし手を右往左往させるオロチに私は自分の居場所を教える様に声をかける。
「そらぁ!捕まえたぞぉ!」
「きゃあっ!捕まってしまいましたぁ。」
本当は今すぐにでもこの場から立ち去りたい。でもそう言う訳にもいかず、がばっと勢い良く私を抱き込むオロチに黄色い声を出す。
「花子は良い匂いがするのぉ〜♡」
首筋に感じる荒く生暖かい息にぞぞぞっと背筋に嫌なものが走った。我慢よ、花子!こんなのあの客に比べたらまだマシな筈っ!
「…オロチ様、そろそろ。」
「ん〜?もうその様な時間かぁ〜?」
「!」
オロチの家臣だろうか。1人の男性が彼に声をかける。そろそろ大橋や船を爆発する時間。私は慌ててオロチに抱き着いた。
「私は…もっとオロチ様といたいです…。」
目を潤ませ上目遣いで普段だったら絶対にしない様な甘えた声でオロチを見上げる。案の定、オロチは鼻息を荒くしぎゅうっと私を抱き締めた。
「仕方無いのぉ〜!もう少しだけじゃぞ!」
「オロチ様っ!?」
「黙れっ!わしは将軍だぞっ!」
この人が馬鹿殿で良かった…。何か言いたげな家臣を一喝するオロチに嬉しいと抱き着く。
(もう少し…もう少しだけ…。)
私のメンタルよ…耐えてくれっ!
ーーーーーー
あれから暫く時間が経ちいい加減痺れを切らした家臣がオロチに進言する。
「オロチ様っ!時は迫っておりますぞっ!」
「何だとっ!?」
流石にマズイと思ったのかオロチは顔を強張らせアタフタと慌てている。チッ、もう少し時間稼ぎしようと思ったのに!
「もう…終わりでございますか…?」
「オロチ様っ!」
「ぐぬぬ〜っ…!」
ワンチャンイケるかと猫撫で声で甘えればオロチは顔を歪め何かと戦っている。もうひと押しだと思った時、今の今までお酒を飲んで寝こけていた狂死郎さんが立ち上がった。
「オロチ将軍、そろそろ花子殿をカイドウ様の所に帰した方が良いかと。」
「ぐうぅ…仕方あるまい…!」
カイドウを出されればオロチも下手な事は出来ない。諦めた様に私を離したオロチに一礼して狂死郎さんは私の腕を掴みお座敷を後にした。