第34章 え?暇なの?
何故、雷ぞうが生きているか理由を知ったヒョウ五郎は驚きを隠せずにいた。20年の時を越える事など出来るのか…。しかし、目の前にいるのは間違いなくあの赤鞘九人男の雷ぞうだった。
「うぅ〜…信じがたい…!」
「俺はお前が信じがてぇよ!カリブー!」
「うぅ…そんな事言わねぇでくれよ…麦わらさんっ…!」
どうやら雷ぞうが盗んだ手錠の鍵はルフィではなくカリブーのものだった様だ。晴れて自由の身となった彼だったが帰りの船が無く、ルフィに子分になる変わりに船に乗せてくれと懇願する。
「昔の事は反省してる〜!心の入れ替えたんだ!俺は!」
「んん〜…?」
明らか胡散臭そうな表情。普通だったら彼の言葉を信じる者など誰もいないだろう。
「よし!いいぞ!心の入れ替えたんなら。」
「えぇー?!」
しかし、ここで信じるのがルフィだ。こうもあっさりと要望を受け入れられ、自分から言い出したカリブーは驚愕し何かの罠かと疑いの念を持つ。
「…往生際が悪く…意地汚く生にしがみついていて…良かった…!」
膝を付き身体を震わせ顔を手で覆うヒョウ五郎は笑みを浮かべた。本当はもうこのまま野垂れ死ぬのだろうと死を受け入れていた。赤鞘の侍達は生きていた…、おでんの子、光月モモの助は生きていた…。
「反逆の火は…消えていなかったか…!」
後、少し遅ければ何も知らずに死んでいた。しかし、希望の光が見えたヒョウ五郎は何かを決意した様にルフィと雷ぞうを見据える。
「雷ぞう、麦わらの人!こんな老いぼれにもまだやれる事はある筈!どうか俺にも尽力させてくれ!」
地面に手を付き懇願するヒョウ五郎に雷ぞうの顔が綻ぶ。彼は嘗て"ワノ国"一のヤクザの大親分だった。その事を知ったルフィも嬉しそうに声を上げた。
「時にお前達…今、花の都で同志を集めていると言ったな。」
ここ兎丼には採掘場とは別に同じ広さの作業場がある。何万人もの囚人がいるが全ての者が盗みや傷害で捕まった訳では無い。
「ここにいる殆どの囚人達の罪状は…オロチへの反逆だ!」
ここには国中の怒りが集まっている。嘗て"ワノ国"を支えたヤクザの親分達も捕まっている。自分が口を聞けば喜んで光月の為に戦ってくれると、ヒョウ五郎は力強く言い放った。