第34章 え?暇なの?
鈴後の北にある墓場。吹雪が吹き荒れるその地に1軒の荒屋がひっそりと佇んでいた。パチバチと焚き火が弾ける音にゾロは目を覚ました。
「刀ぁーっ!?」
「きゃあっ?!」「わぁーっ?!」
飛び起きたゾロの声と女子供の悲鳴が響く。盗まれた刀を探し飛び出した彼が辿り着いたのは鈴後のおいはぎ橋。そこで牛鬼丸と言う僧侶と交戦になったところ、人斬り鎌ぞうに狙われていた女と少女に出くわした。
「先程は私共の命をお守りくださってありがとうございました。」
「あはは〜!ありがとうねぇ〜!」
深手を負ったゾロに女は床に手を着き頭を下げる。そんな彼女に構う事無く荒屋を出ようとするゾロを彼女は引き止める。
「およしになって!傷はまだ癒えていません!」
「いてててっ?!だからそこを怪我してんだっ!?」
せめて傷が癒えるまでここにいてくれと懇願する2人にゾロは諦めたのか、用意されている食事と酒を掻き込む。何故、命を狙われたのか尋ねると彼女等は将軍の怒りを買ったと語る。
「ねぇねぇ、お侍さん!あたいはトコだよ!"お"を付けるとおトコだけど"男"じゃないよぉ〜!面白いでしょ〜!」
「…そうでもねぇ。」
「え"ぇっ?!」
面白いだろうと目を輝かせるトコにゾロはバッサリと切り捨てる。顔は笑っているもショックを受けた様に笑い出すトコに女はくすくすと笑みを浮かべる。
ーあははっ!めっちゃ面白いんだけどっ!ー
「…。」
きっと花子がいたらこの少女に負けないくらい笑い転げていただろう。暫く会っていない彼女を思い浮かべゾロは1人ふとほくそ笑む。
「あの…絶対秘密にしていただきたいのですが…。」
「…何だ。」
「私…兄を探したいんです…。20年前に生き別れた兄を…今、この"ワノ国"にいるかもしれないんです。」
真剣な面持ちで話す女に何も言わず耳を傾けるゾロだったが、彼女の口から発せられた名前に目を見開いた。
「兄の名前は…光月モモの助。私は…妹の日和と申します。」
(モモの助の…妹っ…!?)
(やっぱり!兄をご存知何ですね!兄は無事なんですか?)
(ちょっと待て!頭を整理する…。)
(っ!もしかして…兄を追う…敵っ?!)
(味方だっ!)