第34章 え?暇なの?
花子 side
「花子はどうしてここにいるんだい?女中…には見えないけど。」
「ん〜…何と言うか…。」
どう説明していいか分からず私は連れて来られた経緯をヤマト君に話すと、彼は顔を顰めカイドウ達の行いに腹を立てている様子。
「あの糞親父っ!花子に何て事をっ!」
「あはは…本当にね…。」
ヤマト君の腕に嵌められている枷も私と同じ爆弾が仕込まれているらしい。流石に実の子供を殺す事はしないだろうと思ったけど、あのカイドウならそれもやりかねない。
「ヤマト君は、どうしておでんさんになりたいの?」
「幼い頃に彼の航海日誌を手に入れた。彼の豪快な人生に僕は彼の様に生きたいと思ったんだ!」
正義のヒーローに憧れる子供の様にキラキラと目を輝かせておでんの話をするヤマトに、花子の頭にふとある事が浮かんだ。
「…ねぇ、その航海日誌には光月史郎の事も記されているの?」
「彼の事を知っているのか!?」
「ちょっとね…。」
「彼も素晴らしい人物だよ!おでんを支え彼等を導いたのだから!」
ヤマトの話に花子は顔を綻ばせる。祖父は本当におでん達に愛されていたのだと。しかし、喜々として史郎の事を語っていたヤマトの顔がふと曇りを見せる。
「…でも…ある時を境におでんは史郎の事を書かなくなった。」
「…ある時?」
"ラフテル"に辿り着いたロジャー海賊団は解散しおでんも家族の待つ"ワノ国"に帰国した。しかし、その航海日誌の何処にも史郎の事が載っていなかった。まるで…元からいなかった様に…。
「あんなに仲の良かった2人が何故…史郎は何処にいってしまったのか…。」
「…。」
"ラフテル"に辿り着いたと同時に史郎は姿を消した。そして、誰も彼の事を覚えていない。その理由を知る花子はぐっと唇を噛み眉を顰めた。
「ねぇ…ヤマト君。もし良かったら…その航海日誌を見せてくれないかな?」
もしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれない。花子の申し出に一瞬、戸惑いを見せたヤマトだったが笑顔で頷き懐から航海日誌を取り出した。
(史郎は本当に頭が良い!わしの自慢の弟だ!)
(これからは史郎と"ワノ国"を盛り上げてゆくぞ!)
(…史郎とは何者だ?)
(分からぬ…何故こんなにも胸が苦しいのか…。)