第34章 え?暇なの?
「狂死郎!待ってたぜ!」
「ササキ殿、出迎え感謝致す。」
"ワノ国"の侠客【居眠り狂死郎】は久々に酒でも飲もうとササキに呼ばれ鬼ヶ島を訪れていた。
「そっちはどうだ?」
「相変わらずでござる。」
ニヤリと笑みを浮かべる狂死郎にササキも満足そうに彼の肩を叩く。取り敢えず、部屋に案内するとササキの後を着いて行こうとした時、何処からか笑い声が聞こえてきた。
「あははっ!もう、コハクったら〜!」
「この声は…?」
「多分、花子だな。」
「花子?」
新しい女中か誰かだろうかと、首を傾げる狂死郎にササキは折角だから紹介すると、酒の席とは別の方向へと歩き出した。
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「おーい、花子!」
「ん?…ササキのおじさん。」
「?!」
岩場に腰を下ろす花子に声をかけ振り返った彼女の顔を見た瞬間、狂死郎は目を見開き、花子に近付いて行くササキの後を追う事も忘れその場から動こうとしない。
「お前…その呼び方止めろ…。」
「フーさんはちゃんと謝ってくれました!」
「へーへー、悪かったよ。もうしねぇから。」
「…。」
ジトリと自分を睨み付ける花子の頭をササキはからかう様に乱暴に撫でる。鬱陶しそうに彼の手を振り払った花子は、キョトンとした顔で狂死郎に目を向けた。
「ササキのおじさん、あの人は誰ですか?」
「…何気にそれ気に入ってんだろ。」
呼び方を変えない花子に諦めたのかササキは呆然と立ち尽くす狂死郎に声をかけ、彼はハッとするといつものニヤついた笑顔で2人に歩み寄った。
「これは失礼…余りにも可愛らしいお嬢さんだった故、つい見惚れてしまったでござる。」
「ササキのおじさん、この人良い人ですね!」
「お世辞だ、馬鹿。」
きゃっ!と頬を両手で包み喜ぶ花子の頭をササキが小突く。そんな2人のやり取りには気にもせず狂死郎は花子をじっと見つめている。
「いや…そんな事はない…。」
余り調子に乗らせるなと、狂死郎の方を向いたササキは目を見開いた。花子を見つめる狂死郎の顔が…目が…。
「花子殿は…きっと素敵な女性でござろうな…。」
今まで見た事が無い程…彼が優しいものだったから…。