第33章 ボスとのご対面
ピンッと張り詰めた空気に誰も口を開く事が出来なかった。暫く続いた静寂の中、ナミはローを睨み付けるしのぶを宥める様に声をかける。
「落ち着いて、しのぶちゃん!」
「おナミ!あんたまでこの男の肩を持つの!?」
「冷静になって!確かに敵に捕まったのはこっちのミスかもしれない!でもトラ男の仲間も花子も…勿論、私達だって裏切る様な真似は絶対にしないわっ!」
この計画に錦えもん達がどれ程の思いで今まで生きてきたか分かる。最初の目的は違えどローだってそれは同じ。だからこそ、それを知る仲間を疑われた事が許せなかった。
「くっ…うぅっ…!遊んでるんじゃないのよっ、わたす達はっ!!」
20年と言う長い月日をこの時の為だけに耐え忍んできた。失敗したらそこで全ては終わり…チャンスは2度とこないと、涙ながらの悲痛なしのぶの叫びに誰も何も言えなかった…。
「よさんかっ!しのぶ!…思い通りにはそうそうゆくまい。」
「うぅっ…カン…様ぁ…!」
思い通りに事が進まず苛立つのは分かるが、だからこそ奇跡的に同じ目的を持ったルフィ達の力無くして、おでんの…そして史郎の思いは遂げなれないと、泣きじゃくるしのぶをカン十郎が諫める。
「いやぁ〜!ごめんよっ!どうもぉ〜!」
タイミングを見計らった様にトの康が扉を開け入ってきた。場にそぐわぬ明るい声に全員が目を丸くして彼を見つめる。
「ちょっと!誰よ、あんた!?」
「ん?っうわぁー!綺麗ー!女神様かい?」
突然、乱入してきたトの康に初対面のナミが顔を顰めるが、流石は【太鼓持ちのトの康】と呼ばれるだけあって持ち上げられたナミは気を良くし、あっさりと部屋の中に彼を通した。
「おっ!もしや…しのぶちゃん?…あぁー!カン十郎君!」
2人の顔を見たトの康はそうか、そうかと沁み沁み頷き懐から例の図案を取り出した。
「わしゃあ…興奮したよぉ…始まるのかい?決戦がっ!」
にっこりと微笑む彼の瞳には強い意志が宿っていた。だから、この時…誰も気付かなかった。トの康を見つめるカン十郎の顔が強張っていた事に…。