第32章 デジャブ?
空が黄昏時に染まる頃、仕込みをしているサンジの背後に虚無僧笠を被った男が現れた。目線だけをそちらに動かしサンジは彼に口を開く。
「…トラ男か?お前がいちゃあ、商売の邪魔だ。」
「…緊急事態だ。何処かに隠れろ、黒足屋。」
笠を上げ顔を出したローにサンジはピクリと眉を動かす。昼間、"狂死郎一家"の者だと名乗るチンピラがサンジにイチャもんを付け、一悶着あったがそれの仕返しかと思えば違う様だ。
「俺達の顔を知る奴等が来る。」
「…ホーキンスか?」
「だけなら…まだ良かったがな。」
百獣海賊団"真打ち"の中でも最強の6人"飛び六胞"。その内の2人がサンジを探していると言う。1人は飛び六胞ページワン、そしてもう1人がルフィと同じ最悪の世代の1人でもあるX・ドレーク。
「取り敢えず、ここは危険だ。」
「ちょっと待て!花子ちゃんが何処にいるかも分からねぇのにここを離れる訳にはいかねぇよっ!」
居場所が分からないにしても、もし花子がこの花の都にいるのなら自分達だけ逃げる事は出来ない。
「…花子はここにはいねぇ。」
「何っ?!」
「話は後だ、着いてこい。」
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途中、敵の追っ手から逃げるウソップとフランキーと合流したローとサンジ。何故、彼等も逃げているかと言うと昼間の騒動でフランキーもサンジに手を貸してしまったからだ。
「かなりマズイ状況だ。お前等の誰かが捕まったら面倒な事になる。」
もし、錦えもん達の事がバレれば20年かけた討ち入りの計画も全て水の泡となってしまう。
「いいな。もし捕まったとしても侍達やミンク族の事は吐くなよ。」
この計画を成し遂げる事は錦えもん達…そして亡きおでんの悲願。次の言葉を待つ様にウソップはゴクリと唾を飲み込む。
「何も喋らず…殺されろっ!」
「っ?!怖ぁー?!ルフィはそんな事言わねぇぞっ!?」
「俺達はドライなんだ。」
果たしてそれはドライと言うのだろうか。無情にも言い放つローにウソップは声を荒げ、顔を隠して戦えば良いと言うフランキーの意見は却下された。
(てめぇっ!花子が捕まっても同じ事言うのかよっ!?)
(何言ってやがる!あいつが捕まったら全部喋ってでも助かれっ!)
(どこがドライだぁー?!)