第31章 おかえり…ただいま
店を閉めサンジは貰った地図を頼りに花子の家を訪れた。あの後、仕事があるからと去っていく花子を憂いのある瞳で見つめるサンジを見兼ね、ロビンが渡したものだ。
(…緊張するなぁ。)
正直、夜に女の家を訪ねるなんてと言う事を気にする様な間柄では無いが、2年振りの花子との逢瀬にサンジは大きく息を吐きそっと戸を叩いた。
「はぁい、どちら様~?」
「…花子ちゃん、こんばんは。」
「サンジ君!」
扉が開き内暖簾から顔を出した花子は突然のサンジの訪問に驚いたものの、すぐに顔を綻ばせ彼を中に招き入れた。
「今、お茶淹れるね~。」
「ごめんね…寝るところだった?」
床に敷かれた布団が目に入り申し訳なさそうに謝るサンジに花子は大丈夫だと笑顔を見せる。
「…ルフィから聞いたよ、足の事。」
「そっか~…でも、もう大丈夫だよ!」
「ごめんね…君が辛い時に側にいてあげられなくて…。」
悔しそうに唇を噛むサンジの隣に腰を下ろし、花子は彼の手を取るとにっこり微笑んだ。
「サンジ君がそんな顔しないで?」
「でも!俺はっ…!」
夜の浜辺で花子を見かけたあの日…サンジは彼女を守ると誓った。花子が傷付かない様、彼女が消えてしまわない様…それなのに…。
「俺はっ…君から離れ様とした。守りたい、側にいたいと思う君の側を…!」
「…。」
サンジは"ホールケーキアイランド"での事を話した。ビッグ・マムの娘との結婚、自分が逃げ出さない様にゼフやジルが人質に取られた事、そして自分の過去…。
「助ける義理なんてない筈なのに…俺はあいつ等を見捨てる事が出来なかったっ。どうにもならねぇ俺にルフィは言ってくれた。」
ーお前の本当の気持ちを言えよっ!ー
その言葉にサンジの胸に秘めていた思いが溢れ出した。サニー号に、仲間の元に帰りたい。もっと皆と一緒にいたい…。
「君に…会いたいって…。」
「サンジ君…。」
「もう、君の元に戻れないと思った…だから、俺は諦めた。でも…頭に浮かんでくるのは花子ちゃんの事ばかり…。」
花子を引き寄せ彼女の存在を確める様に強く抱き締めるサンジの身体は微かに震えていた。
「会いた…かったっ…!」