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貞操観念低めな子が色んな感情をぶつけられる

第31章 おかえり…ただいま


ページワン side


仕事の帰りに花子の家に立ち寄ったが、あいつはいなかった。高鳴っていた胸がしゅんと萎むのを感じ、花子を探す為、俺と姉貴は町をブラついている。

「んもぉ~!花子の奴、何処をほっつき歩いてるんでありんすかぁ~?」

「仕方ねぇだろ、花子だって暇じゃねぇんだからよ。」

ぶーぶー文句を垂れる姉貴を宥めるが俺も花子に会えない事は残念に思う。最近俺はおかしい…。気付けばあいつの事ばかり考えちまう…。

「あっ!花子を見付けたでありんす!」

「おい、姉貴!いきなり飛び出すっ…っ?!」

花子を見付けた姉貴が俺の手を引き駆け出そうとした瞬間、ドクリッと心臓大きく脈打ち身体が凍り付いた様に動かなかった。

「ぺーたん?どうしたでありんすか?」

「…。」

まるで、足が地面に張り付いたみたいに動かない俺に首を傾げ、姉貴は俺の視線の先に顔を向ける。そこには金髪の髷を結い黄色い着物を着た男と花子が抱き合っている姿。

「あんの野郎っ!?あちきの花子に何、手ぇ出してんだっ!?」

飛び出して行きそうな勢いの姉貴の手をぐっと強く握る。そうでもしねぇと、胸に広がる黒いものが一気に爆発してしまいそうで…。

「ぺーたん…?」

ドクドクと脈を打つ胸に吐き気にも似た不快感に顔が歪む。俯く俺の顔を覗き込み姉貴はそっと優しく頬を撫でた。

「あちきはいつでもぺーたんの味方でありんすよ…。」

いつもは無茶苦茶で頭を抱えるけど…こう言う時は姉貴が俺の姉貴で良かったと思う。

(触るな…。)

泣きじゃくる花子の頭を男がそっと撫でる。艶のある黒髪には俺が渡した藤の花の簪がユラユラと揺れている。

(触るな触るな触るなっ!)

俺のだっ…!俺がっ見付けたんだっ!そいつの笑顔も、そいつに触れていいのも…全部っ…!

ー男が女に簪を渡すのはね…"貴女を守ります"て意味らしいよ。ー

なぁ…花子?お前、簪を受け取ったよな?凄ぇ嬉しそうにしてたじゃねぇか?

(オマエハ…オレノモノダロウ…?)

ドロドロと蠢く感情が俺の胸を黒く覆い尽くした…。

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