第4章 この苛立ちは君のせい
【グレースピネル】
この石を手にした時、天地に伸びる久遠の視界に聞こえるウジャイの呼吸音を聞くだろう。
それは美しき神の鳥ガルーダのスピリットが発する羽音であり、生命の源である力を鼓舞し精神をリラックスさせる波長。
この力は、メンタルとフィジカルのバランスを意識的に整え、コントロールし穏やかな精神と健全な肉体を保持していく。
また、本質的な愛に対する気付きの時間も始まり、これからの出会いにも繋がっていく事は勿論、 結婚相手や公私問わずパートナーとの意志疎通やコミュニケーションにも良い影響が広がっていくだろう。
「確か、こんなんだったか。」
「意思の疎通…。」
宝石の意味を知った花子は思うところがあった。ローに一線を引かれてしまった。
(もっと違う意志疎通が良かったなぁ…。)
知りたくなかったローの気持ち。彼の言葉を思い出し顔を俯かせる花子の頭をサボが優しく撫でる。
「ブラックベルーガは知能が高い。だから人の気持ちにも敏感だ。こいつは花子に元気になって欲しかったんだろうよ。」
「…。」
目の前を優雅に泳ぐイルカに目を向け花子は柔らかく微笑む。もしかすると、これを渡したイルカは落ち込んだ彼女の心を穏やかにしたかったのかもしれない。
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サボ side
「ふふっ、嬉しいなぁ…。」
ふわりと笑う花子に目を奪われた。花子の濡れ羽色の髪をそっと耳に掛けると、彼女は不思議そうな顔で俺を見上げる。
「サボ君?」
「…。」
頬に手を当て撫でると擽ったそうに笑う花子が可愛くて、無意識に顔を近付ける。
「サボく「黙って。」
後少しで唇が重なりそうになった時、俺達の目の前に1羽のカラスが現れた。
「え?カラス?」
「…チッ。」
"カラス"の奴…邪魔しやがって。急かす様に鳴き喚くカラスに舌打ちをし俺は花子から身体を離す。
「どうやら時間の様だ。…じゃあな。」
「?!」
花子の頬にキスをすると驚いた顔をして頬を真っ赤にしていた。
(また…会いてぇな。)
花子に別れを告げ俺はそっと彼女に巻いて貰ったハンカチにキスをした。