第30章 Let's 就活!
ページワン side
「花子~!今日も来てやったでありんすぅ~!」
「姉貴…入る前にノックしろよ…。」
「うるティちゃん、ペー君、いらっしゃ~い。」
声もかけずにいきなり扉を開ける姉貴に頭を抱える。ズカズカと遠慮無く部屋に入る姉貴と俺を花子は笑顔で迎えてくれた。
「聞いて欲しいでありんすぅ、花子~!今日もぺーたんがぁ~!」
「ふふっ、本当に2人は仲が良いね。」
「勘弁してくれ…。後、姉貴、ぺーたん言うなや。」
勢いよく飛び付きペラペラと話し出す姉貴の頭を撫で笑顔で聞く花子は本当に優しいと思う。俺だったら殆ど流して終わりだからな。
「丁度ね、お茶淹れ様と思ってたの。2人もどうぞ。」
「いつも悪いな。これ、土産だ。」
「わぁ!これ、有名なお菓子のお店のじゃない!良く買えたね!」
「あちきが並んだでありんすよぉ~!」
いや、姉貴は選んだだけだろ!?並んだの俺!実際は並ばずに買えたがそれは黙っておこう。
「ありがとう~、嬉しい!」
箱を受け取り嬉しそうに顔を綻ばせる花子にトクンと俺の胸が鳴る。まただ…。
「…。」
「ぺーたん、どうしたでありんす?」
「何でもねぇ。てか、ぺーたん言うなや。」
花子との出会いは突然だった。新しく出来た茶屋に行きたいと無理矢理花の都に連れられ、食い過ぎて腹痛を起こした姉貴に花子が薬を分けてくれた。
「お茶どうぞ~。」
「何かいつもと違うな。」
「分かる?お客さんから良いお茶っ葉いただいたの~!」
ニコニコと笑い菓子を食べる花子は本当に幸せそうで、俺達もマスクを外し食べ始める。マスクを外すのも花子の前だけ。
「美味し~!このお店気になってたけどいつもすぐ売り切れちゃうんだよね~。」
「あちき達に言ってくれればいつでも買ってくるでありんすよぉ~!ぺーたんが!」
「いや、俺かよ。」
百獣海賊団の幹部"飛び六胞"の俺達なら店の奴等も贔屓にするが、それはまだ花子には言えずにいる。
「ふふっ。じゃあ、またお願いしちゃおうかなぁ~。」
もし、俺達が海賊と知ったら花子はどう思うだろう。怖がりもう会ってくれなくなるのか?
(変わらず…その笑顔を向けてくれるか?)