第30章 Let's 就活!
花子 side
薬を差し出すけどお姉ちゃんは受け取ってくれない。確かに突然現れた女から薬を渡されたら怖いよね。弟君も怪訝な顔してるし。
「毒なんて入ってないですよ。」
苦笑いを浮かべ薬を自分の口に放り込むと噛み砕き飲み込んだ。うぅ…苦い…。
「普段はこのまま飲み込むんですけど…。」
「…姉貴、取り敢えず貰っとけよ。」
「むむむっ~。」
弟君にも言われ観念したお姉ちゃんは薬を受け取ると、弟君の方を向きさっとマスクを外し薬を飲んでくれた。
「!甘いでありんすぅ~!」
「周りを飴でコーティングしているので、苦味は感じないですが…。」
周りに花が咲いた様な笑顔のお姉ちゃんは薬を舌で転がしている。あぁ…早く飲み込まないと…。
「っ?!にっがぁー?!」
「周りのコーティングが溶けてしまいますよ。」
「先に言えよっ!?」
いや、余りにも彼女が嬉しそうにしている顔が可愛くて…。お詫びに家で休んで行くかと訪ねると、意外にも2人はあっさりと頷いてくれた。
ーーーーーー
うるティちゃんとぺー君を家に招き入れると2人は天井から吊るされた薬草や、棚にある瓶を物珍しそうに見つめている。
「本当に薬師だったんだな。」
「じゃないと薬なんか渡さないよ~。」
布団を敷きうるティちゃんをそこに寝かせ、先程より少し穏やかになった彼女の表情にホッとする。
「ペー君も狭いけどゆっくりしてね。」
お茶を出すとペー君はそれをじっと見つめ手を付けようとしない。まだ、疑ってるのかな?
「毒とか入ってないよ?」
「いや…そうじゃなくて…。」
マスクに隠れた口元を隠す様にペー君は膝を抱え込む。うるティちゃんもそうだったけど、もしかしたら2人は他人に口元を見られるのが嫌なのかもしれない。
「私、薬を作っているから何かあったら声を掛けて。」
「…ん。」
ペー君に背を向けゴリゴリと薬草を磨り潰していると、後ろからズズッとお茶を啜る音が聞こえ、ふと私の口角がきゅっと上がるのを感じた。
(ぺーたん♡あちきもお茶が飲みたいでありんすぅ~。)
(自分で飲めよ。)後、ぺーたん言うなや。
(飲めだとぉー!?そこは飲ませるとこだろうがよぉ!)
(…。)仲良いなぁ…。