第30章 Let's 就活!
ゾロ side
ー大切なものを手に入れる為に、大事なものを失うとしたら…お主ならどういたす?ー
不意に錦に聞かれた時は、こいつ何言ってんだと特に気にしてなかったが…あいつは知ってたのか…。
「だから…私がここに居続ける限り、ルフィ君の夢は叶わないんだよ…。」
ルフィが海賊王になった時…こいつは俺達の前から姿を消し、俺やルフィ達の記憶から花子の存在が消える。
「お前はどうしてぇんだよ。」
「最初はやっぱり嫌だったよ?皆の側を離れるのも、皆が私の事を忘れてしまうのも。」
「…。」
「でもね…キラキラと輝くルフィ君の笑顔を見ると、彼の夢を邪魔する事は出来ないと思ったの。」
他の奴等が幸せならそれで良いと言った花子。ルフィの夢が叶うなら自分が犠牲になっても良いと思ってんのか。
「だからね…私を見付けて。」
「あ?」
「何年、何十年掛かってもいいから…私の事を思い出して、私を見付けて…。」
柔らかく笑う花子にぎゅっと心臓を握られた様に苦しくなる。本当にこいつは、馬鹿な奴だ。
「そんな面倒な事、俺はごめんだ。」
「…ゾロ君、冷たい。」
「様は俺がお前を守りゃあいいんだろ。」
俺の夢は世界一の大剣豪、そしてルフィを海賊王にする。その為にこの2年死に物狂いでやってきたんだ。
「何十年も待ってられっか。」
俺が世界一の大剣豪になった時、花子を必ず迎えに行くと言ったがその約束は無しだ。
「俺が世界一の大剣豪になる瞬間を、その目に刻み付けろ。」
「…!」
「その先も、お前は俺の隣で馬鹿みてぇに笑ってりゃあいいんだよ。」
俺を邪魔する奴は叩っ斬る。それが神だろうが魔王だろうが容赦しねぇ。大きく見開かれた花子の目からは涙が溢れ落ちた。それすら綺麗だと思う俺は、知らねぇ内にこいつに溺れてたみてぇだな。
「ん…ぞろくっ…」
「…そろそろ移動するか。」
唇を離し花子を抱き上げ出口とは違う襖を開けた部屋の中には布団が敷いてある。
「布団…?」
「お前、マジで気付いて無かったのか?この店は出合茶屋だぞ。」
「?!」
恥ずかしそうに顔を赤くさせる花子を布団に押し倒し、俺はその唇に食らい付いた。