第30章 Let's 就活!
花子は酒は好きだが決して強い訳ではない。飲めば酔うが自分の限界を分かっているので、よっぽどの事がない限りは潰れはしない。
「ふふふ~!」
「…。」
しかし、問題なのは彼女は酔うと人との距離感が一気に近くなってしまう。子分盃を交わした時も色んな者に素敵だ、格好いい等と言って抱き着き、自分やローに怒られていたのはまだ記憶に新しい。
「…そろそろ水飲め。」
「え~?まだ大丈夫だよぉ~。」
(いや、俺が大丈夫じゃねぇんだよっ!?)
この後の事を考えると潰れられては困るとゾロは花子のお猪口を取り上げ一気にそれを飲み干した。
「あぁ~!私のお酒ぇ…。」
「お前は俺に酌してればいいんだよ。」
恨めしそうな目をする花子にお猪口を突き出せば酒を注ぐ甲斐甲斐しい姿に思わず顔が綻ぶ。暑いと少し合わせ目を開き足を崩し花子はゾロに身体を凭れかからせた。
「ねぇ、ゾロ君。私、凄く幸せだなぁって思うんだよ。」
「…。」
「私を娘だと言ってくれる人がいて、色んな人に出会って…元の世界が嫌いな訳じゃ無いけど…私は皆と一緒にいたい。」
「…いればいいじゃねぇか。」
花子が元の世界に戻る方法はまだ分からない。もし見付けたとしてもここにいたいなら戻る必要は無いと言うと、彼女は無理だと悲しそうに笑った。
「だって…ルフィ君の夢が叶わなくなっちゃう…。」
ルフィの夢と花子に何の関係があるのだ。怪訝な顔をするゾロのお猪口を奪うと花子はそれを一気に呷った。
「史郎さん…私のお祖父ちゃんの話は聞いたよね?」
「あぁ、モモの親父と義兄弟だったんだろ。」
「お祖父ちゃんもね…おでんさんと一緒に"ラフテル"まで行ったんだって…。」
最後の島に辿り着き喜びを分かち合う仲間達を嬉しそうに見つめながら史郎は姿を消した…。そして彼の事を誰も…。
「覚えていなかったんだって…。」
「っ?!」
「"ラフテル"に辿り着くにはコハクが必要。でもコハクは私にしか懐かないでしょ?」
花子の話にゾロは目を見開いた。ルフィが海賊王になる…それはすなわち…。
「私は…元の世界に戻っちゃうんだよ…。」
自分の中から花子が消えてしまうと言う事…。