第4章 この苛立ちは君のせい
花子 side
ー俺はお前を抱かねぇよ。ー
(…フラれた。)
昨日のロー君の言葉を思い出し腹立つぐらい綺麗な海を眺めた。
(まぁ…予想はしてたけど。)
彼が私にちょっかいを掛けるのは只の気紛れ。夜になれば女の人の所に行ってしまう…。
ー抱いてやろうか?ー
それでも、その言葉が嬉しかった…。もしかしたらって期待してしまう。
「はぁ~…。」
マルコの事があって私は1人行動禁止令が出た。イッカクも仕事だし誰もいないから暇をもて余した私は、1人寂しく船の近くの岩場に腰掛け太陽に照されキラキラと輝く海を眺めている。
『キュイ!キュイ!』
「こんにちはぁ。」
海面から黒い身体をしたイルカが顔を出し口に何か咥え私に差し出す。そっと手を伸ばすと掌にコロンと宝石が転がった。
「いつもありがとうねぇ~。」
『キュウ~』
微笑みフニフニと柔らかい頭を撫でてあげるとイルカは甘える様に私の手に擦り寄る。イルカって人懐っこいって言うけど、この世界のイルカは皆そうなの?
「綺麗~。」
太陽の光でキラキラと輝き、透き通ったグレーの宝石はロー君の瞳の色と同じ。
『キュン、キュン』
「ふふっ、慰めてくれるの?」
海面近くに下ろされている私の足にイルカはまるで慰める様に擦り寄る。その仕草が可愛くてまた頭を撫でてあげると、不意に後ろから声が聞こえた。
「これは驚いたな…ブラックベルーガが人に懐くなんて。お嬢さんは人魚か何かかい?」
「え?」
後ろを振り返れば頭にゴーグルの付いたシルクハットを被り、首にスカーフを巻き青い服装を主体とした金髪の男の人が立っていた。
「驚かせて、すまない。あんまり可愛い声が聞こえたもんで。」
「ごめんなさい、煩かった?」
「いや、カナリアの様な可愛い声だったから気になってね。」
「…。」
恥ずかしげも無く言い放つ男の人に頭大丈夫か?と心配になった。私の心の内など知らず男の人は笑顔で近付き隣に腰を下ろす。
「俺はサボ。このブラックベルーガはお嬢さんのペット?」
「…花子。多分、野生だと思うけど私の友達。」
「へぇ~。」
今だ私の足で遊んでいるイルカをサボ君は物珍しそうに見つめた。