第30章 Let's 就活!
花子 side
薬を作る為の道具を買ってやる代わりに少し付き合えと、ゾロ君に連れて来られたのは普通のお茶屋さん。彼の事だから碌でも無い事考えてるのだろうと思ったけど…普通にお腹空いてただけだったみたい。
「部屋、空いてるか?」
「はい、お2階へどうぞ。」
お店の人との話を終えたゾロ君の後に着いて行くと6畳程の個室に案内された。只、ご飯食べるだけなのに何で個室?
「何だか、高そう…大丈夫?」
「確かに少し値段は高ぇが、誰にも邪魔されたくねぇしな。」
柔らかい顔で私を見つめるゾロ君にドキッと胸が高鳴った。少し熱くなった頬を誤魔化す様に座布団に座ると美味しそうな料理やお酒が運ばれてきた。
「それでは、お時間になったらお声掛け致します。何かありましたら、こちらの鈴をお鳴らしください。」
「あぁ。」
(ん?時間?)
そう言うとお店の人は襖の前に呼び鈴を置くと一礼し部屋を出ていった。1階のオープンな席にもお客さんは沢山いたし、もしかして個室は時間制なのかな?
「取り敢えず、飲むか。」
「うん!はい、どうぞ。」
徳利を傾けゾロ君のお猪口にお酒を注ぐ。そう言えばと、彼が初めてお店に来た時もこんな事があったな…。
「なんか…懐かしいね。」
「あ?…そう言えば前にもお前には酌して貰ったな。」
私がこの世界に来て2年。色んな事があったな。ロー君と出会って、ジルさんに拾われて…。大変な事もあったけど沢山の人達との思い出全てが私の宝物。
「初めはチョッパーに惚れた何だと変な女だと思ったが、こうやって酌をするお前の仕草が綺麗だと思った。」
「…お褒めに預かり光栄です。」
珍しく私を褒めるゾロ君の言葉が何だかむず痒くてお猪口に注がれたお酒をクイッと飲み干すと、スッキリとした味と鼻から抜ける香りに顔が綻ぶ。
「美味し~!」
「お前が出した酒も美味かったが、これも中々イケるな。」
久々の日本酒にテンションが上がった私はどんどん飲み進めていく。だから、何か企んでいる様な顔で私を見つめるゾロ君に気付かなかった。
(ぞぉろく~ん…。)
(…。)なでなで
(…眠くなってきた。)
(おいっ!?)寝るなっ!