第29章 俺の事なんて忘れて…
サンジ side
「王には王たる条理がある!」
何が王の条理だ。てめぇ等は王族の前に人じゃねぇ!コゼットちゃんは大丈夫だろうか…。
「不条理は、貴様だ。」
「まったくだ、間違いにも拍車が掛かっている。それは…この男の悪影響か?サンジ。」
ジャッジが懐から1枚の紙を取り出し俺に見せた瞬間、全身の体温がサッと引いていく感覚に襲われた。何故、てめぇ等がその人を…!?
「2年前までこいつの所にいたそうだな。海域も特定済み。どうやらこれは最近の写真の様だな。会場レストラン、バラティエ。」
止めろ…その人は関係ねぇ…!その人は俺にとって…!
ー風邪…引くなよ…。ー
「っ!」
「どうした?顔色が悪くなってきたな。」
「おい、さっきの勢いはどうした?」
ニヤニヤと笑みを浮かべ俺を挑発するニジの声なんて耳に入らない。何も言わなくなった俺にジャッジは更に追い討ちをかけてきた。
「…確か、貴様には恋慕している女がいるそうだな。」
「?!」
「へぇ~!あのサンジがなぁ。」
「ドフラミンゴの所にいた…名は確か…花子と言ったか。」
ジャッジは花子ちゃんの手配書を取り出し俺に突き付ける。久し振りに見た彼女はあの頃と変わらず綺麗な笑顔をしている。
「今は貴様の仲間の所にいる様だが…以前は夏島にいたそうだな。」
「っ?!その子は関係ねぇっ!」
「それを決めるのは私だ!」
何故、彼女を傷付ける?何故、そっとしておいてあげねぇんだ?ギリッと歯を食い縛り睨み付ける俺をよそに、ジャッジが彼女の手配書に目を写す。
「その女って確かドフラミンゴの愛人だろ?」
「まったく…この様な女の何処が良いのか…。」
「アッチの方が凄ぇんじゃねぇか?」
「っ!?彼女を馬鹿にするなっ!?」
ゲラゲラと下品な笑い声を上げるニジとヨンジに俺の中で何かが切れた。てめぇ等に彼女の何が分かるっ!
「止めろっ!」
足に炎を纏わせニジに飛び掛かろうとした時、ジャッジの声が部屋に響き渡る。
「貴様の意志など関係ない。…明日は、平和な挙式にしよう。」
"平和な挙式"。その言葉の意味が胸に深く突き刺さる。俺が拒めば…クソじじいは…ジルのおっさんは…。
ージルさんはね、私に居場所をくれたの。ー
花子ちゃん…君の笑顔が守れるなら…俺は…。